『へんな学部 令和ニッポンのユニーク学問最前線』(西岡壱誠 著/未来図編集部 監修)

 人はなぜ大学に行くのでしょうか……。かつて大学時代は社会に出る前の「モラトリアム」期間と呼ばれていましたが、少子化や人手不足、就職活動の早期化などで、学生も大学も悠長なことは言っていられなくなりました。

 本で紹介されている「へんな学部」は、大学にとっては他と差別化でき、学生にとっても将来の進路と直結、企業は即戦力になる人材を集められる、と全方位にメリットが。タイトルから、シュールな珍学部を集めたものかと一瞬想像してしまいますが、読後は「“いい意味で”へんな学部」と補足したくなります。著者の西岡壱誠氏はドラマ「ドラゴン桜」を監修し、大学についての著書も多数あるので、紹介されている学部も信頼感が。

 例えばあらゆる危機管理を学べる日本大学危機管理学部や、県立恐竜博物館と連携し、発掘のフィールドワークを行う福井県立大学恐竜学部、プロのクリエイターを輩出している京都精華大学マンガ学部など、個性豊かな学部が登場。佐賀大学コスメティックサイエンス学環や、関西国際大学経営学部ゴルフマネジメントコースなど、学部名が斬新だと略称がどうなるのかも気になります。

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 なぜその地にこの学部なのか、というのも意味があって、佐賀大学の場合「佐賀県をコスメティック産業の中心にする」という県の構想があったそうです。専門人材を県内で育成し、コスメティック構想に協力してもらいたいとのこと。関西国際大学も、キャンパスがある三木市の基幹産業の一つがゴルフ、という事情があるそうです。市内には25ものゴルフ場が存在。教室とゴルフ場を行き来しながら、ゴルフ場運営や芝管理などを学べます。グリーンを眺めながら人生の見通しも良くなりそうです。

 読んでいてついに来た、と思ったのは、熊本県立大学半導体学部(仮称)。2021年、世界最大の半導体受託製造企業である台湾のTSMCが熊本県に工場建設を決定したことが話題になりました。半導体バブルで景気が盛り上がる中、2027年度に熊本県で日本初の半導体学部が爆誕するとは歴史的な出来事です。

 といってもこの大学では半導体製造に関わる技術者というより、AI・コンピュータ・半導体を横断的に学ぶ“ゼネラリスト育成”を目標にしているそうです。半導体を使って課題を解決し、社会に貢献するという崇高な理念を持った人材が輩出されるのでしょう。もちろん現実的には、熊本のTSMCに就職できれば高給を得られる、という利点も見逃せません。

 ミネルバ大学や沖縄科学技術大学院大学、国際教養大学などは難易度が高いですが、その他は比較的入りやすそうで、将来がある程度保証されるのならお得です。この本が売れて注目されることで、穴場の学部だったのが難易度が上がってしまうかもしれませんが……。

にしおかいっせい/1996年生まれ。偏差値35から東大を目指すも2年連続で不合格。その後独自の勉強法で東大合格を果たす。日曜劇場「ドラゴン桜」監修。著書に『読んだら勉強したくなる東大生の学び方』など。

しんさんなめこ/漫画家・エッセイスト。女子学院高、武蔵野美術大学短期大学部卒業。近著に『世界はハラスメントでできている』。

へんな学部: 令和ニッポンのユニーク学問最前線

西岡壱誠 ,未来図編集部

笠間書院

2026年4月28日 発売