「『黙秘すれば不起訴になると思います』はよく言いますね」
〈20日でパイ〉
作中で九条や依頼者が頻繁に口にするフレーズ。“パイ”は釈放を意味する隠語だ。九条が依頼者に「完黙(完全黙秘)」を貫くよう指示を出し、〈20日でパイ〉を狙うシーンが多々登場する。
最大20日間の勾留期間に依頼者が黙秘を続けて検察が決定的な証拠を得られなければ、不起訴処分として釈放に持ち込める。
「ヤクザや反社といった逮捕慣れしている人たちは留置場の中でパイや完黙、叩き(強盗)とか、そういう隠語を使いたがるんですよ。だけど僕らが『完黙すればパイです』って言うことはほとんどない。正しい法律用語ではないですし、なんか弁護士が使うのは恥ずかしいというかダサいというか。『黙秘すれば不起訴になると思います』はよく言いますね」
作中では九条の「完黙」の指示に従った依頼者が次々に釈放、不起訴を勝ち取っていく。上野氏は「完黙」にとどまらず他の手法も駆使するという。
「最近は取り調べ自体を拒否することが刑事弁護業界で盛んになっています。逮捕されて留置場に収容されると、取り調べのために警察が呼びに来る。その時に『行きません』って言わせるんですよ。これは弁護士の指示が大半ですが、本人が自発的にやる場合もあります」
一体、どういうことか。
「黙秘を継続させることはなかなか難しい。実際、取り調べ室まで行くと、警察はあの手この手使って、強引な手法で喋らせようとしてくる。黙秘権を確実に行使するためには、もう取り調べ自体を拒否したほうがいい。無理やり取り調べに行かせたり、衣服の差し入れを禁止したりする場合には、警察署長や担当者宛に抗議文を出します」
