後悔しないために知っておきたい「住まい」と「お金」の新常識
長寿化が進むいま、資産形成や相続対策、そして高齢期の住まいへの関心はますます高まっている。本特集では、いま知っておきたい「お金」と「住まい」の新常識を専門家に聞くとともに、その受け皿となり得る商品・サービスを紹介する。
【金融・相続特集】
分散投資の選択肢に個別株や不動産も検討
畠中 雅子氏
新聞、雑誌、ウェブなどに多数の連載、レギュラー執筆を持つほか、セミナー講師、講演、相談業務、金融機関へのアドバイス業務なども行う。「高齢期の住まいとお金を考える会」を主宰。著書・監修書は70冊を超える
中東情勢の悪化に伴うコスト高などを背景に、食品の値上げが相次いでいる。家計防衛のために、食費を見直す家庭は少なくないが、食費の切り詰めには限界がある。過度な節約は健康リスクを高め、結果として医療費の増加につながる恐れもある。そんな中、「目先の節約に固執するのではなく、より大きな視点で生活設計を立て直す時期に来ている」と話すのは、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子氏だ。
物価上昇に負けない家計を築くには、支出を抑えるだけでなく資産を育てるという発想が重要。その手段の一つが資産運用だ。2024年に始まった新NISA(少額投資非課税制度)をきっかけに資産運用への関心はかつてないほどに高まっている。一方で、資産運用で大切なのは「何を買うか」だけではない。特定の銘柄や資産クラスに偏らない分散投資や相場の短期的な変動に惑わされず資産を育てる長期投資の姿勢が欠かせないのだ。
特に昨今では、株価指数に連動するインデックスファンドの人気が高い。しかし畠中氏は「インデックスファンドは個人の資産運用における有力な選択肢ですが、それだけに資産を集中させるのは、分散投資の観点から十分とはいえません」と指摘する。個別株式や不動産など値動きの異なる資産を組み合わせることも検討したい。
実際にアパート経営を実践する畠中氏は「安定的な賃貸収入を期待できるのが不動産投資の魅力。年金以外の老後のキャッシュフローとして不動産は心強い存在です」と話す。不動産投資に対して、心理的なハードルを感じてしまう人もいるだろう。昨今では、AIを活用し優良な物件を厳選してくれる不動産サービスもあるので、初心者でも検討しやすいといえよう。
遺言書を作成して意思を次世代に伝える
相続で特に注意が必要なのは、財産の大半を自宅などの不動産が占めるケースだ。不動産は現金のように均等に分けることが難しく、相続トラブルにつながりやすい。「不動産を兄弟の共有名義で相続するのは避けるべきでしょう。兄弟の誰かが亡くなると、甥や姪と共有関係になるなど権利関係が複雑になり、将来的にトラブルを招きかねません」と畠中氏は警鐘を鳴らす。こうした事態を避けるためにも、元気なうちに生前贈与を活用して相続人同士の不公平感を減らしたり、遺言書を作成したりといった準備を検討したい。
相続や贈与の分野では近年、制度改正が相次いでいる。例えば、相続時精算課税制度の見直しだ。24年から年間110万円の基礎控除が新たに設けられ、使い勝手が向上した。
相続税対策としても活用されてきた暦年贈与では、相続税の課税対象となる贈与期間(持ち戻し)の対象が、これまでの死亡前3年間から死亡前7年間へと段階的に延長されている。これは負担増となる改正だ。「非課税で生前贈与を行う場合は、暦年贈与よりも相続時精算課税のほうが持ち戻しもなく、確実に贈与できるかもしれません」。
遺言書を作成する際、安心なのは公正証書遺言だが、自筆証書遺言を選ぶ場合は、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用したい。紛失や改ざんを防げるほか、家庭裁判所で行う検認の手続きが不要になる。近年は、子どものいないシニア層を中心に、財産を広く社会のために役立てる「遺贈寄付」への関心も高まっている。「私の周りにも遺贈を考える人が増えている印象です」と畠中氏。遺贈寄付を行うには、遺言書を作成し、その意思を明確に残しておくことが欠かせない。元気なうちから準備を進めることが、自分の願いを実現し、家族に余計な負担を残さない相続につながるはずだ。