7月17日、改正皇室典範が参院本会議で賛成多数により可決され、成立した。現行の皇室典範が禁じてきた皇族の養子縁組を、戦後に皇籍を離れた旧宮家の男系男子に限り認め、養子のもとに生まれた男子は皇位継承資格を持つことになる。
衆議院と参議院の両院正副議長が与野党との協議を経てまとめた「立法府の総意」にはなかった、養子の男子の皇位継承資格に一方的に踏み込む内容となったことに批判が集まっている。
今回の一連の経緯を「戦後の象徴天皇制を揺るがすような事態が加速している」と憂い、月刊「文藝春秋」8月号(発売中)に緊急寄稿したのが、昭和史研究家で皇室研究の第一人者として知られる保阪正康氏だ。保阪氏は「昭和天皇」(中央公論新社)、「明仁天皇と裕仁天皇」(講談社)など多数の評伝・ノンフィクションによって、天皇、皇族を近現代史のなかで描いてきた。今回の焦点となった男系男子の養子候補となり得る旧宮家も、かつて詳細に取材している。何より、平成の天皇と皇后と3年にわたり、懇談を重ねた経験をもつ。
その保阪氏は、男系養子は「国民の多くが支持する、直系である愛子内親王への継承の可能性をあらかじめ閉ざすことを意味する」と指摘し、こう続ける。
「天皇の地位は『国民の総意に基く』と記す憲法から乖離しているのだ」
また、今回の改正の進め方にも重大な問題があるとし、次のように憂慮する。
「天皇をはじめとする皇族の暮らしを左右する法改正であるのに、彼ら自身の意見にまともに耳を傾けることなく法案化が進められていることだ」
「生身の存在である皇族への敬意が感じられないのだ」
その上で、
「今般の皇室典範改正は、天皇と象徴天皇制への歴史的な理解に裏打ちされているようには思えず、一時的に多数を誇る政治権力が象徴天皇制を改変しようとする横暴であるようにすら見えてくる」
現在発売中の「文藝春秋」8月号では、「皇室典範改正は象徴天皇制を揺るがす」と題して、保阪氏が10ページにわたって緊急寄稿。長年の取材に基づき、平成の天皇と皇后がつくり上げてこられた国民との信頼関係のうえに成り立つ天皇像とはどのようなものか、2017年の生前退位を可能とする特例法の経緯、旧宮家に尋ねた養子問題への返答などを綴っている(「文藝春秋」のウェブメディア「文藝春秋PLUS」にも掲載)。

