「言葉の力」と「言葉以外の力」

 水原 どうしようと思ったんですけど、でも何とかなった。シルクロードを渡る旅っていうモキュメンタリーだったんですけど、シルクロードの時代も人々は違う文化圏を渡っていくので言葉は通じなかったんだよなと気付いた。当時も貿易だったり文化交流だったりは、言葉が通じなくても成立していたわけで、もともとそれが人間のコミュニケーションなんだとトルクメニスタンで知りましたね。それが分かってすごいうれしかったです。

水原氏が20歳の時に発売された『水原希子 フォトブックKIKO』(講談社)

 もちろん英語を話せたほうが絶対いいと思うし、いろんな国の言葉が話せるのは大特権だと思うんですけど、最悪言葉を話せなくても、人と人であれば通じ合える。テレパシーのようなものが私たちには備わっていて、人が困っている時とか、何かをやり遂げなきゃいけない時とか、誰かの助けが必要だったりする時は、みんな「この人は助けが必要なんだ」と分かるわけじゃないですか。くみ取ろうとする気持ちがあれば、言葉が通じなくても、コミュニケーションはできる。それを世界の旅で知れたことは、すごい自信につながったし、うれしいことでした。私たちが思う以上に、人間って、言葉以外のコミュニケーション能力が備わっているんだなと感じました。

 成田 しかも言葉って厄介で。言葉にしちゃうことで、素朴な共感とかシンプルな恐怖がかえって伝わりにくくなっちゃうこともありますよね。

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 言葉って情報を伝えるにはよくできてるけど、ただ一緒にいた事実とか、ただ心がつながってる感覚を感じたり伝えたり残したりするうえでは、むしろマイナスなんじゃないかってよく思います。

 水原 分かります。感じていることを言葉にしようとすると逆にすごい安っぽく聞こえたり。何とか伝えようと、これもあれもって言葉で盛り付けると、どんどん大切じゃないような気持ちになってきたり。言葉って難しいですよね。

 成田 芝居だって、セリフになってない部分がセリフと同じぐらい大事ですよね。モデルさんに至っては、もはや言葉を発さず所作だけで何かを伝えるという。

成田悠輔氏 ©文藝春秋

 水原 そうですね。モデルの仕事も俳優の仕事も、言葉が先行というよりは、見る人を想像して、その感情を動かすことが大事かなと思っていて。言葉よりも、何を感じてどう表現するか。モデルでも目や表情だけでシーンを伝えなければならないので、ある意味で演技に近い部分があります。だから私は、ただ格好よく見せるより、人の想像をかき立てて物語が生まれるような仕事のほうが好きで、そういう仕事を選ぶことが多いですね。普通の人には理解しがたいようなものだったりもするんですけど。

 成田 今日は『文藝春秋』という文字ばっかりの雑誌で、言葉にならないものを言葉にしようとしている。

 水原 そうですね。

 成田 不可能にお付き合いいただいてありがとうございます。

 水原 いやいや、全然。

※約8500字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(水原希子×成田悠輔「『これは心の手術です』水原希子が太鼓判を押すヴィパッサナー瞑想とは?」)。全文では、以下の内容が語られています。
・ロールモデルは誰?
・モデルと俳優の「二刀流」から見えるもの
・10日間の「瞑想合宿」に参加して

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