選ばれた人間だけが延命治療を受けられる独特な世界の描写。『徒花-ADABANA-』で臨床心理士を演じた水原希子は、その役にどう向き合ったのか。

撮影 杉山拓也/文藝春秋

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作品参加への思い

─今作のオファーを受けてまず、どう思われましたか?

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 繊細で唯一無二の世界観を生み出す、甲斐(さやか)監督作品に参加できるという喜びがとても大きかったです。もちろん、いつか共演してみたいと思っていた俳優のおひとりでもある井浦新さんとご一緒できるというのも光栄で。脚本を読む前から「このお二方がいる世界に行きたい!」と強く思い、「ぜひやらせていただきたい」とお受けしました。

役作りについて

─今回、水原さんが演じた臨床心理士のまほろは、甲斐監督が「アイデンティティの不確かさに苦しみながら、成長していく難しい役」と言及されています。役作りはどのようにされたのでしょうか。

 まずは役を理解するために、臨床心理士をご紹介いただき、実際にカウンセリングも受けてみました。ただ、今回私が演じたのは、病院に勤務している臨床心理士という設定だったので、YouTubeで見つけた病院勤務経験のある臨床心理士からもお話を聞きました。

 その方のお話で衝撃だったのは「自分の担当している患者さんが実験材料に思える瞬間があった」というお言葉。この仕事の繊細さや微妙な立ち位置、患者さんとの距離感などが見えた気がして、非常に勉強になりました。

『徒花-ADABANA-』公式ホームページより引用

一番難しかったシーンは?

─前半は感情を表に出さず、淡々と演じるシーンが多いものの、後半では感情が爆発するシーンも出てきます。どのシーンが一番難しかったですか?

 後半で、まほろにとって非常にショッキングな事実が明らかになるシーンの撮影時は前日からナーバスでした。

 でも井浦さんに「希子ちゃんが考えるままにやればいい」と励ましていただき、ふっと肩の力が抜けました。甲斐監督もこのシーンの撮影が終わった時に、走ってきて私を抱きしめてくださり、愛しかない現場に参加できたことに、あらためて感謝しました。