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まわりからどう思われようと自分が幸せな気持ちでいることが一番強い

─「もうひとりの自分」という設定である「それ」の存在にも大きな愛を感じました。

 本作に登場する「それ」が、みな幸せそうなのは、彼らが小さな幸せを見つけるために生きているからではないかと思います。結局、誰かの身代わりであろうと、まわりからどう思われようと、自分が幸せな気持ちでいることが一番強いのではないかと思うのです。

 私はいま、瞑想にハマっているのですが、瞑想って自分の心の奥底に何があるかをみていく作業なので、自分が潜在的に何を考え、何に執着しているのかがわかってくると、それを捕まえて手放せるようになるんです。

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 例えば瞑想中に、過去に失敗した記憶が何度も出てきたら、そこにトラウマがあったんだ、と素直に認めて手放せるので、生きるのがラクになります。

 私は過去に、自分の出自やアウトサイダー的な生き方で炎上したこともありますし、女性向けセルフプレジャーアイテムブランド「イロハ(iroha)」のブランドアンバサダーに就任した当時は「女性が性を語るな」と言われたりしたこともあります。でも、自分が幸せで最高の仲間と最高の仕事をしていたら、まわりに何を言われても揺るがないし、どんな自分でも好きでいられる。そういうふうに考えると、「無駄な花(徒花)」なんて本当はないのかもしれないですね。

相澤洋美=取材・文
杉山拓也=写真
池田奈穂=ヘアメイク

みずはら・きこ 1990年、アメリカ生まれ。10代前半からモデルとして活躍し、『ノルウェイの森』(10年)で映画俳優デビュー。その後、NHK大河ドラマ『八重の桜』(13年)、『失恋ショコラティエ』(14年)などテレビドラマにも出演する。『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』(15年)ではアクションにも挑戦。『あのこは貴族』(21年)で、第35回高崎映画祭にて最優秀助演俳優賞を受賞している。

INTRODUCTION
長編映画デビュー作『赤い雪 Red Snow』(19年)で国内外から高く評価された甲斐さやか監督の、5年ぶりとなる長編第2弾。タイトルの「徒花」は、咲いても実を結ばずに散る「無駄な花」の意味。主演の井浦新をはじめ、日本映像界に欠かせない実力派俳優陣が集結。『落下の解剖学』(23年)のロラン・セネシャルと『ドライブ・マイ・カー』(21年)の山崎梓といった世界第一線で活躍するスタッフが編集を担当した。

STORY
裕福な家庭で育った新次(井浦新)は、死の危険を伴う病に冒され、国家による“最新技術”を用いた延命手術を受けるため、病院で療養していた。治療の一環として、臨床心理士のまほろ(水原希子)とともに、過去の記憶をたどりはじめた新次。やがて選ばれた一定階級以上の人間のみに与えられる「それ」という存在に関心を持つようになる。自分とまったく同じ姿の「それ」と対面した新次は、次第に「それ」にのめりこんでいく。

STAFF & CAST
監督・脚本:甲斐さやか/出演:井浦新、水原希子、三浦透子、斉藤由貴、永瀬正敏/2024年/日本/94分/配給:NAKACHIKA PICTURES/©️2024「徒花-ADABANA-」製作委員会/DISSIDENZ