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変換を確定させる際に「改行」キーを押す必要がない

――親指シフトの一番のメリットとして、ひらがな1文字につきキーボードのタッチ数が1回ですむので、1~2回のローマ字入力よりも、はるかに少ないタッチ数で日本語入力ができる点が挙げられています。

池田 そうですね、ワンアクションで文字を打てるのは大きいと思います。親指シフトは、基本的に日本語入力にキーボードの「3列分」しか使わないので、(数字のあるキーも含めて)4列に配置されているJISキーボードよりも楽にタイピングできます。ただ、それ以外にも優れている点はいろいろあるんです。例えば、「後退」キーと「取消」キーが届きやすい位置にあるので、手を動かさずに文章に手を入れることができます。

 また、普通のキーボードと比べると改行(Enter)キーが小さいので「不便じゃないですか?」と聞かれますが、Japanistでは漢字変換を確定させる際に「改行」キーを押す必要がありません。普段はあまり意識せずに行っている動作だと思いますが、実はけっこう無駄な動きが多いんです。その点、親指シフトはかなり合理的に設計されています。

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文字キーの下に表示されている「かな」は、単独で打つ。文字キーの上に表示されている「かな」は、文字キーを打つ手の親指シフトキーと同時に打つ。また、下に表示されている「かな」の濁音は反対側の親指シフトキーと同時に打つというのが「親指シフト」の基本操作方法。
なお、キーボードの中央で色が分かれており、右手と左手のカバー範囲を区分している ©文藝春秋

「使えなくなったら、執筆活動をやめる」

――ユーザーには著名人も多い?

池田 作家の姫野カオルコさん、元NHKアナウンサーでジャーナリストの村田幸子さんなど、いろいろな分野で書かれている方がいらっしゃいます。みなさん、「宣伝の機会があれば、どんどん私の名前を使ってください」とおっしゃっています。愛が深いですよね。「親指シフトが使えなくなったら、執筆活動をやめる」という方も少なくないです。

――ツールとしての合理性だけではなく、ある種の「文化」に近い存在なのかもしれません。

池田 だからこそ、メーカー側も販売を続けているのでしょうね。作家さんだけではなくて、速記やテープ起こしの作業をしている方にも、根強いファンがいますから。

 他のソフトやOSでは、バージョンがアップデートされると、新しい機能が追加されますよね。ところが、親指シフトに関しては、OSなどの環境が変わっても「今までと同じ機能」「同じ動作」を維持してほしいという声のほうが大きいことも特徴です。今後、爆発的に広まることはないかもしれませんが、ユーザーのご要望に寄り添っていきたいと考えています。

親指シフトキーボードを搭載したノートパソコンも ©文藝春秋

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