安倍晋三 首相
「これまで日本が結んできた自由貿易協定(FTA)とは全く異なる」
YOMIURI ONLINE 9月27日
今後は日米2国間で「物品貿易協定(TAG)」の締結に向けての交渉が始まる。TAGとは複数国の間でモノの輸出入にかかる関税の引き下げや撤廃について定めているもの。日米間の新しい協定で、農産品や工業用品など幅広い貿易品目が交渉対象になる。
安倍首相は会談後の記者会見で、TAGが自由貿易協定(FTA)と違うことを強調していた。FTAは投資やサービスの自由化にも範囲が及ぶ。菅義偉官房長官も27日の記者会見で「TAGは投資、サービスなどのルール分野を含まないもので包括的なFTAとは言わない」と述べた(日本経済新聞 9月28日)。
しかし、日米の共同声明にはTAGの議論完了後に「他の貿易・投資の事項も交渉を行う」と明記されており、今後の交渉が実質的なFTAへとつながる可能性がある。ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表も、日本に対して完全なFTAの締結を目指す考えを表明した(ロイター 9月26日)。
みずほ総合研究所の菅原淳一主席研究員は「TAGはFTAそのもの」と指摘する。ある政府関係者は「政府内に『FTA』という言葉を使いたくない人がいるから『TAG』という言葉を使った」と打ち明けていた。「TAGという文字を初めて見た」と話す通商担当者もいるという(日本経済新聞 9月28日)。安倍首相は5月の国会審議で、これまでの日米貿易協議を「FTAの予備協議ではない」と説明していたが、東京新聞はTAGについて「首相の国会答弁との整合性を取るためFTAと異なる造語をひねり出したとみられる」と説明している(9月28日)。TAGとは単なるFTAの言い換えなのだろうか?
ドナルド・トランプ 米大統領
「シンゾーとの友情があるから自動車に関税をかけられなかった」
産経ニュース 9月28日
TAGの交渉中は、日本から輸入する自動車・同部品にかける25%の追加関税が見送られる。しかし、これはあくまで交渉期間内に限った話。トランプ氏は26日の首脳会談で安倍首相にこう伝えたというが、なんだか恩着せがましい。
産経ニュースは「貿易協定をめぐる交渉は首脳間の友情が国益に直結する」と美談にしていたが、自動車への追加関税の可能性が完全に消えたわけではない。むしろ、決定的な「カード(切り札)」であり、今後の交渉次第で日本は一方的な譲歩に追い込まれることも予想される。さらに、将来安全保障問題も絡めて追加関税を迫ってくる可能性もある。
米商務省は自動車・同部品の輸入が安全保障上の脅威となっているかどうか、通商拡大法232条に基づいて調査を行っている。どうして自動車の輸入が安全保障の脅威になるのか? 言っていることがめちゃくちゃだが、それがまかりとおるのがトランプ政権であることを忘れてはならない。なお、調査による判断は来年2月に下されるという。