あっという間に、私の大好きなファイターズの選手に
かつて二岡智宏の猛練習が糸井嘉男に感銘を与えたように、いま大田泰示のヘッドスライディングが札幌ドームをわかせているように。G党諸兄諸姉を泣かせるファイターズのトレードは、いつもチームに新しい風を吹き込むものでした。
格好よく小ぎれいに、スマートにまとまってばかりいなくていい。ちょっと笑っちゃうぐらいにみっともなくてもいい。ヒーローインタビューのお立ち台で、小学生の息子の名前を呼んで「丈太郎見たかコノヤロー!」なんて絶叫したっていいんだ。
死亡遊戯さんの好きな選手なんだよね、という目で見始めた彼は、あっという間に、私の大好きなファイターズの選手になっていました。
今年で38歳。俗にいう「松坂世代」の一人です。平成の怪物・松坂大輔が遂にかつての輝きの片鱗を再び1軍の舞台で見せた今年、まるでそれを見届けるのを今まで待っていたとでもいうように「松坂世代」の選手達の引退表明が相次ぎました。杉内俊哉、後藤武敏、小谷野栄一(栄ちゃん!)……そして、彼も。
思えば2年前の時点で既に、「満身創痍」なんていう文字の入ったグッズさえあったほどでした。今年はもう2か月以上1軍の出場がありません。引退の表明に驚きがあるかといったら、嘘になります。覚悟はとうにしていました。
それでもやっぱり、とうとうその日が来てしまったことの寂しさはどうしようもなくあります。あるのですが、ただ、あまりしんみりするのもどうも彼には似合わないかなという気も実はちょっとしているのですよね。何しろ引退すると発表されたまさにその日に、イースタンリーグの試合で代打逆転スリーランをかっ飛ばしているんですよこの人は。華があるにも程があるってものじゃありませんか。
ならば、贈る言葉はこれしかないでしょう。ファイターズに来て3年半、彼が何度となくお立ち台で叫んできた言葉です。最後に、今度は、彼自身に向けて。
どうぞ皆様、ご唱和下さい。
せーの!
ヤノケンジ、サイコォーーーーーーーーー!!
※1 『プロ野球死亡遊戯』(文春文庫)「読売代打遊戯 闘魂伝承! あなたは矢野謙次の凄さを知っているのか?」より
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