養子縁組相手を「親族」と認めない国に対する訴訟

 なぜここで孝紘と養子縁組相手が「親族」であることを確認することを求める、国家賠償請求訴訟を起こすに至ったのか。順を追って説明すると以下のようになる。

 11年10月に死刑が確定した孝紘は、同年11月中旬頃、福岡拘置所から面会及び信書の発受が予想される者について、その氏名、年齢、続柄、職業及び住所を「外部交通者名簿」に記載して届け出るように求められた。

北村孝紘作の刺青の下絵(筆者提供)

 そこで孝紘は、養子縁組をしていた前記Fさん、Hさん、Iさんの名前を挙げ、続柄を「親族」と記載して提出したのである。

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 これに対して福岡拘置所は、孝紘とこの3人の養子縁組は「外部交通の確保が目的であると認められる養子縁組」に該当すると判断。孝紘に対して、3人は外部交通が認められない「親族ではない者」として取り扱う旨を、12年1月に告知したのだった。

「養親子としての情を深めるという目的意識はない」と言えるのか?

 その判断の根拠とされたのが、07年5月に当時の法務省矯正局長が出した〈被収容者の外部交通に関する訓令の運用について〉という通達である。

 これは全国の矯正管区長と刑事施設の長、矯正研修所長に向けて出されたもの。

北村孝紘からの筆者宛ての手紙

 そのなかに、〈外部交通の確保が目的であると認められる養子縁組への対応について〉という項目があり、以下のように記されている。

〈無効とは認定できないまでも、専ら外部交通を得る目的などのためにされたもの(*養子縁組)であり、養親子としての情を深めたりするという目的意識はなく、あるいは極めて希薄である場合など、法令における外部交通に関する各種規制を潜脱するためと認められる場合は、当該養子縁組による親族関係は、法における親族との外部交通に係る規定を適用する基礎を欠くものであり、当該外部交通を認めない運用もあり得ること。特に、暴力団関係受刑者の場合、安易に外部交通を認めないよう留意すること〉

 だが、〈訴状〉では、こうした通達について、〈処遇法は、死刑確定者の権利として親族との信書の発受につき、範囲を制限することなく原則としてこれを認めているのであり、それにもかかわらず、本件通達によってその範囲を制約することは、法の趣旨・目的に反する〉と本件通達の違法性を訴える。

 さらに通達での、〈特に、暴力団関係受刑者の場合、安易に外部交通を認めないよう留意すること〉としている箇所についても、〈訴状〉では、〈そのような場合、すなわち、反社会的集団の組織維持等、反社会的な目的の外部交通を可能にするために養子縁組がなされたことが明らかな場合、と限定的に解されるべきである〉と、孝紘の養子縁組が、そうしたことに当てはまらないことを指摘している。

※本記事の全文(約4000文字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(小野一光「“人は変われる”ということを、私は彼に教えてもらった気がする」)。

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