野球界と芸能界、違う世界で刺激を受け合う関係
根元との交友関係について当時の野久保さんはこう言っていた。
「今年一年が終わってお互い頑張ったねと言うのは簡単だけど、それで満足はしたくない。来年はもっと頑張ろうというお互い刺激し合いながらいつまでもレベルアップしていきたい。いつまでもそんな関係でいたい」
野久保さんもまた、根元の活躍を励みにしていたのだ。そしてこう続けた。
「この前、ちょっと仕事がうまくいかなくて、落ち込んだ時にたまたまテレビをつけたら根元がホームランを打っていた。クヨクヨしていられないと思った」
野球界と芸能界。まるで違う世界で働く若者たちが見事に切磋琢磨、刺激を受け合い成長を続けている姿が私にはキラキラと光って見えた。こんな事もあった。根元は「羞恥心」を打席に入る際の登場曲に使用すると決めた時、野久保さんに連絡を入れた。「明日から曲を使わせてください」。「よし。じゃあ、明日は猛打賞だな」と野久保さん。そして結果は、しっかりと3安打猛打賞(2008年5月9日 千葉マリンでの東北楽天戦)。「本当に打てて嬉しかった。ボクにとって『羞恥心』はとても縁起のいい曲です」。試合後、当時の根元はこのエピソードを嬉しそうに披露してくれたのはつい昨日の事のようだ。
支えられて愛された背番号「2」
あれから月日は流れた。若手だった根元はベテランになり2018年9月27日、引退を発表した。そして10月7日のホークス戦。本拠地にて引退試合が盛大に行われた。根元は今も野久保さんとの交友を続けている。引退試合当日は予定があり残念ながら駆け付けることが出来なかったが、その後もずっと背番号「2」の事を気にかけてくれているという。それは私にとっても、とても嬉しい事だ。
「この13年間、沢山の方の協力、支えがあってここまでやることが出来ました。今はただ、ただここまで支えてくれた皆様への感謝の気持ちで一杯です。いい野球人生でした」
引退を決めた日。根元はこのようなマスコミ向けのコメントを私に託した。色々な人に支えられ13年間、838試合の一軍生活を過ごした。ファンがスタンドで歌う応援歌は愛に溢れていた。「俺たちとこのチームで、いつまでも根元 今こそ見せてくれ 勝負に賭ける思いを」。根元は色々な人に支えられ、愛されユニフォームを脱いだ。幸せな野球人生だった。
梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報)
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