2023年7月、栃木県の幹線道路をバイクで走行していた看護師のキャンディーさん(25)は、カーチェイス状態で逆走してきた2台の車を避けきれず衝突し、右脚切断と右手多発開放骨折などの重傷を負った。

 事故当時は22歳。意識を保ったまま救急搬送された彼女の口から語られたのは、驚くほど冷静な言葉の数々だった。

義足を見せながら話してくれたキャンディーさん ©鈴木七絵/文藝春秋

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「右の大腿骨が飛び出し、脚がないことに気づいた」事故直後の状況

 事故が起きたのは、23年7月16日の午前0時過ぎ。友だちを栃木まで送り届けた帰り道、深夜の真っ暗な道で正面から光が迫ってきた。キャンディーさんは「え、逆走してきてる?」と気づいたという。

 並走する2台の間に逃げるしかないと判断したが、避けきれずに1台と正面衝突した。「バーンって吹っ飛ばされた音がして、体感1秒ぐらい宙に浮いた後、ざーっと地面を10秒間くらい滑った」と振り返る。止まった後、バイクをどかすために立ち上がろうとした時、右の大腿骨が飛び出し、脚がないことに気づいた。

 大量出血のなか、キャンディーさんは「意識を失ったらそのまま死ぬかもしれない」と考え、「どんなに痛くても目を開けてなきゃ」と救急車が来るまで真っ暗な空を見続けた。走馬灯も親の顔も浮かばず、気にしていたのは「病院に休みの連絡を入れないと無断欠勤になっちゃう」ということだったそうだ。

義足をつける前のキャンディーさん(本人のXより引用)

医者は「脚を切断しても助からないかもしれない」と…

 病院では医師から「命を守るために脚を切断します」と告げられた。キャンディーさんは「あ、まだつながってるんだ」と思ったという。のちに写真で、皮一枚だけ脚がつながっていたことを知った。

 一方、沖縄の実家にいた母には、病院から連絡が入っていた。キャンディーさんによると、「娘さんは今は意識がありますけど、むしろ意識がある方がおかしいくらい、予断を許さない状態。脚を切断しても助からないかもしれない」と伝えられたそうだ。母が家族全員に電話をかけまくったが、「みんな全然電話に出なかった」と怒っていたという。

 手術後、病院にはすでに家族が駆けつけていた。気管に挿管されて声が出せないキャンディーさんは、泣いてしまいそうな母にピースサインを見せて「大丈夫だよ」と合図した。「これ以上悲しませたくなかった」と話している。

 事故直後の壮絶な状況と家族とのやり取りは、インタビュー本編で詳しく語られている。

〈つづく〉

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