地方都市の郊外でベーカリーを複数店舗営む亜季子さん(40)。かつて「メンター」と慕った12歳上のママ友・房枝さん(52)について、「はっきりいって、大嫌いになりました」と語る。フリーライターの山野井春絵さんの新書『友達になって後悔してる』(新潮社)からは、2人の関係が少しずつ変わっていった経緯がうかがえる。
亜季子さんは夫とベーカリーを営み、小学生の子ども2人を育てている。房枝さんは隣町でギャラリーカフェを経営していた。出会いは、娘が6ヶ月のころに亜季子さんがそのカフェを訪れたことだった。
泣き出した娘を、房枝さんは自分も子どもを背負いながら抱き上げてくれた。「大丈夫、抱っこしているから、ゆっくり食べて。たまにはいいじゃない?」と声をかけられ、亜季子さんは食べながら泣いたという。同じバンドのファンだとわかって意気投合し、2家族で旅行やキャンプに出かける濃密な付き合いが始まった。
「ルール違反じゃないかしら」
転機は、パン職人の夫の夢を房枝さんが後押ししたことだった。「うちのカフェで、週に1回、あなたの作りたいパンを出してみたら?」という提案を受け、夫はカフェのキッチンで深夜まで仕込みをするようになる。やがて「ラパンのパン」と名付けられ、店にはコーナーも設けられた。
ところが、亜季子さんがオーガニックマーケットにも別の種類のパンを納めていると知ると、房枝さんの態度が変わる。
「うちを飛ばして、どんどん商売を広げられるのは、ちょっと、どうかと思う」
房枝さんはそう言い、パンを「コラボ商品」と呼んだ。亜季子さんは違和感を覚えたものの、世話になった恩を思い、言葉を飲み込んで謝った。翌週にはお詫びの果物を持参している。
その後、2家族の飲み会では、房枝さんが夫に「ダメだし」をするようになった。お酒好きな房枝さんは酔うほど饒舌になり、「良かれと思って言うけどさ」が口癖。「あのパンは酸っぱすぎる」「金額の設定がよくない」などとまくしたて、「もっと勉強するべき」と「~べき」を多用したという。
房枝さんを信じていた亜季子さんも「そうだよ、ちゃんとマーケティングしないと」と一緒になって夫を追い込んでいたと振り返り、「今思えば、夫に申しわけなかった」と語る。
亜季子さんは、ママ友のマインドコントロールで母親が子どもを餓死させた事件を「他人ごとには思えない」と話す。憧れだった存在への思いは、なぜ変わってしまったのか。
(つづく)
