「僕、そんなことしないよ」。

 郷ひろみ本人の目の前でものまねを披露してそう言われた時、ダンシング☆谷村さん(64)は嬉しかったという。ものまねは本人に似せることだけがゴールではない。「似てないよ」という言葉はむしろ誉れになるのだそうだ。故・谷村新司の激しいものまねで知られ、ものまね芸人の事務所「ジンセイプロ」の代表も務めるダンシングさんに、その“邪道”ともいえる芸の原点を聞いた。

ダンシング☆谷村さん ©細田忠/文藝春秋

「千の似てない声を持つ男」から始まった

 芸人を目指していた若き日、ダンシングさんはショーパブで働いていた。三軒茶屋にあった「聖徳太子」という店では当時、夜10時、深夜1時、3時と一晩3回のショーを行っていた。客の多くは酔っており、普通の漫才やコントでは見向きもされない。そんな厳しい環境で生まれたのが「千の似てない声を持つ男」というキャラクターだった。

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「ものまねの出発点が『似てない』から入っているんですよね(笑)」と、ダンシングさんは振り返る。その後、29歳でピン芸人として独立。都内のものまねパブへ活動の場を移す。声こそ似ていなくても、ダンシングさんにはショーパブで鍛え抜いたトーク力があった。「トーク7割、ものまね3割」のショーは客に大ウケ。谷村新司のものまねメイクの技術も磨いていき、現在の芸風を確立していった。

 やがて営業は年間100本に達し、自身の芸能事務所「ジンセイプロ」を立ち上げる。所属タレントを育てる上で重視したのは、「芸名だけで誰のものまねかわかること」。自身も郷ひろみのものまねをする際は「GO!ピロミ」と名乗る。しかし、名前だけでウケを狙うわけではない。「人様の前に出して恥ずかしくないレベルまでスキルアップさせないと通用しない」と、プロデューサーとしての一面ものぞかせた。

©細田忠/文藝春秋

「似てないよ」が最高の誉め言葉だと思う理由

 今や代表ネタの一つである「GO!ピロミ」は、『クイズ⭐︎タレント名鑑』(TBS系)のオーディションで生まれたという。「なんとか1議席でも取りたい」と気合を入れて連れて行った所属タレントは全員落選。ダンシング☆谷村としての自分も選ばれなかった。

 追い詰められたダンシングさんは、思わず「もう1つあるんで、やらせてください!」と審査員を引き留める。しかし、ネタのあてはない。苦し紛れに郷ひろみの名前を挙げると、「GOLDFINGER '99」のイントロに合わせて、後ろ姿のままひたすらジャケットをはだけさせた。

「歌ったら似てないことがバレるから、ずっと後ろ向いて、延々と音に合わせながらジャケットをバタバタとはだけさせるだけ。そしたら、『ちょっとそれ……面白いよ』って合格になった(笑)」

 現在はお馴染みの芸名「GO!ピロミ」もなんと、とっさに思いついたものだったという。番組出演をきっかけに、「GO!ピロミ」への営業オファーも舞い込むようになり、そして2021年の『有田Pおもてなす』(NHK総合)という番組で、ついに郷ひろみ本人の前で披露する機会が訪れる。

 正統派のそっくりさんたちが本人を喜ばせるなか、ダンシングさんは「邪道」の芸風に一抹の不安を抱えながら踊りきった。パフォーマンスを終えて振り返ると、郷は手を叩いて大笑いし、こう言った。「僕、そんなことしないよ」。

「うれしかったなぁ。『そんなことしないよ』とか『似てないよ』っていうのが、我々にとっては誉れなんです。こういう芸ですから、無言が一番怖いんですよね(笑)」

©細田忠/文藝春秋

 “似ていない”ことから始まったダンシングさんの芸は、「似てない」という本人からのお墨付きをもらいながら、さらに笑いを生み出していく。下積み時代のローションプロレス号泣事件や、事務所社長としてミラクルひかるをスカウトした際の裏話、故・谷村新司本人からかけられた「ひやっとする一言」などについてはインタビュー本編で読むことができる。

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