「平成」も、残すところ半年を切った。年末年始も桜の花も、「平成」のうちに楽しめるのはあと一度だけである。つまりは、「平成」のうちに巡ってくる青春18きっぷシーズンも冬と春の2回だけ。鉄道ファンならば、それを利用してぜひとも行っておきたい駅がある。そう、その名も「平成駅」だ。「そんな駅、ホントにあるの?」という人もいるかもしれないので簡単に説明しておくと、九州は熊本、JR豊肥本線にある。熊本駅のひとつ隣の駅。一体、どんな駅なのか。そしてその駅名の由来はどこにあるのか。というわけで、今回はあと半年のうちに行っておきたい「平成駅」を皮切りに、“元号”の名を持つ駅を巡る“タイムスリップの旅”をお届けしよう。
■平成駅(熊本県/JR豊肥本線)
さて、もちろん最初は件の平成駅。熊本駅から豊肥本線に乗って揺られること数分で到着する、熊本の住宅地のど真ん中にある駅が平成駅だ。跨線橋で結ばれた相対式の2面のホーム、そして片方のホームの上にこぶりな駅事務所が設けられているだけの小さな駅。そしてその駅の上には、大きな道路がまたぐように通っている。
周囲は住宅地になっているようで、南側には一戸建ての住宅がたくさん立ち並んでいるし、北側にはマンション群も見える。そのためか、利用者はそこそこいるようで列車がやってくるたびに多くの人が乗降を繰り返す。5分ばかり北に歩けばこれまた大きな道路が通っていて、沿道にはいわゆる“ロードサイドの商業施設”が立ち並ぶ。典型的な地方都市の光景と言えるかもしれない。簡素な作りの駅の雰囲気といい、いかにも“平成らしい”といえばそうである。
「平成駅」の名前の由来は?
そして駅の出口近くの一角には、「平成駅開業」を記念する碑が建っている。はてさて、……とそれを見てみると、平成駅が開業したのは1992年(平成4年)のこと。地域の人たちが駅の建設をのぞみ、それが叶って開業したようだ。では、肝心の駅名の由来は一体何なのか。
「もちろん元号の平成が由来です。平成になってから、この駅周辺地域が住宅地として整備されて、地名も『平成』。そこに新たに作られた駅なので、そのまま地名でもある『平成』を頂いたということですね」(JR九州広報)
なるほど、確かに駅の近くの電信柱にある住所表記を見てみると、「平成」の文字が。明治時代に整備された“明治通り”、昭和時代の“昭和通り”みたいなノリで、平成になって新しく生まれた町が平成と名付けられて、駅もそのまま平成駅になったというわけだ。となると、「平成」が終わることに利用者は一抹の寂しさがあるのでは……。
「いや~よくわかんないっす。駅名がどうのこうのよりも、自分らは平成しか知らないので元号が変わるというのがどんなもんなのか、ソッチのほうが気になります」(平成駅を利用していた高校生)
「どうなんでしょうねえ、考えたこともない。でも、寂しいことはないですよ。平成が終わっても、平成という名前や地名は残るんですから、そのほうがなんだか誇らしいと思いませんか」(平成駅を利用していた御婦人)
なるほど、ごもっとも。どうしたって時は流れていくわけで、そんな中でも「平成」の確かな足跡がこの熊本の地に残る――。もしかしたら数十年の後、平成駅は過去の一時代を象徴するスポットになっているのかもしれない。