文藝春秋11月号の特選記事を公開します。(初公開2018年10月21日)
政府は臨時国会に出入国管理法などの改正案を提出し、本格的な外国人労働者受入れに向けて来年4月の施行をめざすことになった。
これまで政府は、移民政策はとらないと何度も言明してきた。また今回も移民政策ではないと説明するが、従来の四年制大卒者に加え人手不足が深刻なブルーカラーに対しても就労、定住を広げる方針を打ち出したことは、歴史的な転換点と考えてよいだろう。
すでに日本は終わりのない人口減少の時代に突入している。政府機関は今後、20年間に1300万人の人口減少を予測している。移民が犯罪者予備軍であるかのようなイメージが流布されたこともあり、日本に貢献する人材を選択した上で受け入れる移民政策についても、政治家は国民の反発を招くと議論を避けてきた。しかし、3000万人近い外国人観光客を受け入れ、コンビニには外国人店員が当たり前になった今、正面から国会で議論すべき時期を迎えている。
では今回、政府は何を変えようとしているのか? 従来、国際協力をタテマエとしていた技能実習生に代わり、ブルーカラーの分野で初めて就労を目的とする労働者の受け入れ方針を固めた。画期的なことは、技術の高い労働者には家族の帯同と定住の道を開くことである。日本人従業員の高齢化と若者の数の減少によって、製造業などの分野で深刻な熟練工の枯渇が始まっている。中長期にわたる優秀な人材の確保と、今後の地方での人口維持にも繋がり得る点は評価できる。
しかし、問題もある。今回の方針は果たして他の国との比較において競争力を持つ制度と言えるだろうか? 政府案では、外国人労働者をその能力に応じて最長5年の滞在を認める者と家族帯同可で定住も認める人材とに分ける。彼らに対して1号、2号という表現を使っているが、これは評判が悪かった技能実習制度の中の名称をそのまま踏襲しており、上から目線を感じさせる。世界に幅広く情報発信されることを考えれば、「アジア青年日本活躍ビザ」のような前向きのイメージの名称をつける知恵を発揮してもよかっただろう。