キャッシュレスとは、銀行口座がなければ何もできないということ
EU危機の取材をした時、もはや「金融は経済の血液」だという言葉は死語で、銀行は「お金という商品を扱う企業」にすぎなくなったと言われたが、まさにその通りだ。だからこそ、普通の企業と同じようにIT化して人件費を減らし、ローンを売りこみ、大口の客から効率よく資金を集めつつ利益率も上げる。
キャッシュレスとは、つまり銀行口座がなければ何もできない社会になるということだ。ネットバンクや大手小売チェーンが銀行をつくって、その分間口を広げているが、彼らも民間の「お金(カネ)屋さん」であることに違いはないので、同じことが起きる。
フランスでは、1984年に給料の支払いを原則小切手か銀行送金とするとしたとき、あわせて「預金口座開設権」を設けて、銀行が拒否した証明書を出すとフランス中央銀行の命令で強制的に口座を開かせる制度をつくった。しかしその手続きではクレジットカードや小切手はつくれない。それに、銀行はこの制度を逆手に取って、低所得者や儲かりそうもない客を簡単に拒否するようになった。フランス中央銀行は、拒否した銀行に口座開設を命令するわけではなく、地域で順番に選ぶので、歓迎されざる客が自分のところに回ってくるリスクがぐっと減るのだ。
遠い、落ち目のヨーロッパのことだと思われるかもしれないが、これがグローバルスタンダードである。日本にもいずれ波が襲ってくる。
さて、私の口座は、結局予定した日には閉鎖されず、翌月になった。おかげで、その月の口座管理料を取られた。きっとコンピュータのミスなのだろう。