──これまで食べログを中心にしたグルメガイドについて話していただきましたが、実際に美味しい店をどうやって見つけるのか? ぜひその秘密をうかがいたいのですが。
大崎 私は食べログやネットで情報を検索するよりも、Facebookだけで完結しています。
Facebookには私が必要としてる情報を教えてくれる人たちが集まってくれているので、それだけで私がほしいグルメ情報、ラーメン情報はほぼすべて得られるんです。
私の友人はみんな信頼できる食通なので、彼らがおいしいと書いている店なら間違いないですからね。しかもたいへんありがたいことに、予約が取れない店の予約を取ってくれる人たちが多いんですよ。
だからそういう人たちと仲良くなっておくことでどんどんおいしい店の情報は入ってくるし、誘ってもくれるので、恵まれた食生活を送らせていただいてます(笑)。
食だけではなく、忙しい中での膨大な情報の取捨選択はFacebookに頼り切りになっています。Facebookなしでは生活できないと言っても過言ではありません。
──それは大崎さんだからできるワザでしょう(笑)。
大崎 でもFacebookって、基本は昔ながらの口コミと同じなんですよね。ネットがなかった時代は、直接人から聞いた情報を別の人に伝える口コミが主流だったのが、ネットの登場でネットを介したSNSでのコミュニケーションになっただけ。
信頼のおける何人かの情報を頼りにしていけば大きくは外れないというのは、ツールは違えど、昔も今も変わりません。
子安 私も大崎さんと同じで、この人のグルメ情報は信頼できるという人の情報を逐次ストックしていて、行く土地、土地で「ここに来たらあの人がおいしいと言っていたあの店に行こう」と、そのストックから引っ張り出しています。
そういう意味では昔なら身近なグルメな先輩に店を教えてもらっていたのが、いまはSNSを通じてぐっと広がっているような感じですね。
大崎 信頼している友人が書いて、別の日にもうひとりが書いているとなればもう確実にいい店ですよね。さらに3人、4人と書いていたら出遅れちゃいけない、早く食べに行かなきゃと焦ります(笑)。最近なら「すし岩瀬」「弥助鮨」「鮨なが井」「ソンポーン」。たしかにアタリでした。
伊藤 でも僕は皆さん、Facebookにどれだけ本当のことを書いているのかなと疑うこともありますよ。
実際に、おいしいと書いていた人に直接会って「本当においしかった? 」と聞いたら、「ちょっとよく書きすぎちゃった」と答える場合もあるんですよね(笑)。
そもそも、今はもう、たいしておいしくない店なんて世の中にあんまりないじゃないですか。これだけ情報インフラが発達している中、ちょっとでもおいしくなかったり、サービスが悪かったらすぐネットで袋叩きにされますからね。
だから総じてお店のレベルが高くなってきて、平均点も70点くらいになっている。それに、すごくいい店ですよと言われても全然予約が取れないんじゃ、オススメする意味がないですよね。
子安 そうそう。みんながいい店って、予約が取れないし、すごく高いから、知っても意味がないことが多いんです(笑)。
個人的にいえば、飛び抜けて素晴らしくいいわけじゃないけど居心地がいい店って「食べログ映え」しないから点数も上がらないじゃないですか。でもそういう店こそが一番重宝する店で、月に2回くらい行きたくなるんですよ。
伊藤 まさにそう。僕も子安さんと同じく、70点よりちょっと上で、楽しく過ごせて、世の中にまだあんまり知られてなくて、1週間先の予約が取れて、適正な価格で、自分の行動範囲内にある店が知りたいんです(笑)。
食べログで言うと2、3人しかレビューを書いてなくて、点数も3.1くらいがベストですよね。たぶん、このサイトの読者層である一般のビジネスマンもそこを知りたいんじゃないかなあ。
居酒屋専門といった専門分野を掘っているブロガーがいい
──じゃあ、そういう店はどうやって見つけたらいいんですか?
伊藤 僕の方が教えてもらいたいですよ(笑)。
そういう店を見つけるのが今一番難しいですよね。でも、存在しないわけではないし、そういう店の情報をストックとしてもっておかないと、急に店を探さなければいけないときに困りますからね。大崎さんが言った「情報を食う」ということを僕自身も楽しみながらやっていた過去もありましたが、そこから成熟すると、新店や話題の店を追いかけるのではなく、そういう店をもっておきたいという考えは強くなりますよね。
そんな店を少人数で共有できればいいなと思うし、応援したいという気持ちもあります。
大崎 それこそ口コミ、信頼できる友人から教えてもらうしかないでしょうね。
伊藤 あとはいい店の予感がしたら事前情報なしで飛び込みで入ってみるとか。それで当たったこともありますし、数をこなせば自然と嗅覚も鋭くなる。
子安 食べログだって、うまく使えばみつかりますよ。その時、重要なのは点数を鵜呑みにしないことですね。点数だけじゃなくて、行った人のレビューを丁寧に読んで、もう少し自分で情報を吟味・選別しようよと言いたいですね。そうすればいい経験ができると思うんです。
大崎 私は、トップレビュアーの中で、自分の好みと合いそうなお気に入りのレビュアーを見つけて、その人が行っている店に行けばいいと思います。
あと、お店を検索する時に、食べたいものや行きたい店の条件が明確になっていたら、場所やジャンルだけじゃなくて、できるだけ詳しくキーワードを入れて検索するようにするのがいい。
先日も大阪に行った時に、変わった鮨が好きなので「大阪 鮨 変態」で検索したらよさそうな店がヒットしました。点数は2.99(今は3.16)だったので大丈夫かなと思いつつ行ってみたら、すごく私好みでおいしかった。聞いたら、ミシュランにも載ったそうで、こんなこともあるんだなあと感動しましたね。「寿し芳」っていうんですけどね。
つまり、キーワードが明確であればあるほど自分が望む店にぴたっと合う店に行ける可能性は高くなります。
伊藤 僕は、食ベログだけでなくて、個人のグルメブログも書いている人のほうが信頼が置けると思います。個人で情報を発信している人の方が食べログだけで書いている人よりも一段階努力しているからです。
それも、いろんなジャンルの有名な飲食店をホッピングしているよりも、鮨専門とかフレンチ専門とか居酒屋専門といった専門分野を掘っているブロガーがいい。
1つのジャンルでしか書いてないがゆえに、正直な部分が際立って、推薦している店の信頼性が高まると思います。
──みなさん、ありがとうございます! いずれにせよ、おいしい店に行きたいと思ったらそれ相応の努力と工夫は必要だということですね。でもせっかくなので、皆さんのノウハウでたどり着いた、「できれば教えたくないとっておきのお店を教えていただけませんか?
大崎 はは、そうですねえ。じゃあ私は東松原の「鮨 なが井」を。ここは「隠しておきたい店なんですけど一緒にどうですか?」と誘われたのが最初です。気に入ったのに内緒にすることは性格的に滅多にないんですが、ここでの1回目はFaceBookで書かなかったです(笑)。でも2回目も良かったし、今回はあえてオススメします!
伊藤 寿司つながりですが、椎名町の「松野寿司」もいいですよ。
あとは「食彩 きく直」。道場六三郎の元で修業した店主のカウンター割烹。銀座の味を武蔵小山で気軽にがコンセプト。店名通りの実直でストレートな料理。ハンバーグやローストビーフもうまい。
渋谷ホテル街の入口にあるカウンター中心の中国料理店「池湖」もおすすめです。池よりも大きな湖になりたいという店名は、アイアンシェフの店で10年修業した店主の決意。
あとは、「084(おはし)」。「梟門」など新宿のみで展開する竹馬グループから独立した、いぶし銀の居酒屋職人の店。カウンターのみの静かで大人の空間です。
子安 これは身内なのでちょっと反則ですが、青山の「キッチンナカムラ」です。レビューが13件あって、割といい評価なんですけれど、スコアは3.06ですね。多分トップレビュアーが誰も来てないからです(笑).
寿し芳
大阪市北区南森町2-3-23 和光住建南森町ビルⅡ 1F
06-6361-0062
松野寿司
豊島区南長崎2-16-12
03-3951-3588
https://tabelog.com/tokyo/A1321/A132101/13071606/
食彩 きく直
品川区小山4-1-13 1F
03-3793-6165
https://tabelog.com/tokyo/A1317/A131710/13192998/
構成=山下久猛(フリーライター)