昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

自衛隊はなぜ「宇宙部隊」を新設するのか

日本の安全保障にとって、宇宙の持つ意味は大きくなっている

2018/12/01

国際的には軍が主体となって運用されている

 では、なぜ自衛隊の専従部隊がSSAを行うのだろうか。一般的にSSAは、国際的には軍が主体となって運用されている。例えば、アメリカでSSAに当たっている部隊については、頻繁に変更されるために報道でも混乱が見られるが、以前は北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)が軌道上の監視をしていたことで知られていた。2006年に米戦略軍の統合宇宙運用センター(JSpOC)に移管され、さらに2017年4月に米空軍宇宙軍団の第18宇宙管制中隊(18SPCS)に基礎的なSSA業務が移管されている。

 SSAにより確認された物体はカタログ化され追跡・管理されるが、その全情報を公開してしまうと、軍事衛星など秘密にしたい軌道情報まで明らかにしてしまう恐れがあるためだ。実際、2003年に日本が初めて打ち上げた情報収集衛星は、衛星を運用する内閣衛星情報センターが米側に情報公開をしないよう要請していなかったため、NORADにより情報が開示されてしまったことがあった。

H2Aロケットで打ち上げられる情報収集衛星 ©共同通信社

 また、以前は法律上の問題もあった。日本では1969年の国会決議により、宇宙開発は平和利用目的に限られ、日本の宇宙開発を担うJAXAの業務を規定したJAXA法でも平和目的に限定していたため、軍民共同のSSAへの取り組みが出遅れていた。しかし、2008年の宇宙基本法成立により、従来認められていた以上に宇宙の防衛利用が可能となり、2012年のJAXA法改正で平和目的限定の制約が取れたことで、JAXAと自衛隊の広範な分野での協業が可能となった。

 これまで、日本のSSAを担ってきたのは、岡山県に設置されたレーダーと光学望遠鏡による監視施設(スペースガードセンター)2カ所で、その能力は低軌道を監視するレーダーが1m60cm以上の物体を捉える精度で、限定的なものだった。両施設とも一般財団法人日本宇宙フォーラムが所有し、そのデータをJAXAが解析する形をとっていたが、政府の宇宙基本計画でデブリ対策強化が謳われた結果、2017年に両施設がJAXAに移管され、2022年度まで更新・改良が計画されている。また、防衛省も山口県にある海上自衛隊の山陽受信所に、低軌道を監視するレーダーを設置し、日本のSSA情報を一元的に集約する運用システムを整備することになっている。

JAXAが計画する新規レーダー完成予想図(JAXA資料より)

日本の安全保障にとっても重要性を増す

 日本の安全保障にとっても、宇宙の持つ意味は大きくなっている。宇宙基本法成立以降、防衛省が独自にXバンド防衛通信衛星を保有するようになった他、2020年度に打ち上げを予定しているJAXAの先進光学衛星に防衛装備庁の2波長赤外線センサーが搭載され、試験が実施される予定となっている。将来、日本が独自に早期警戒衛星を保有する際には、このセンサー試験で培われた技術が用いられるかもしれない。

 このように宇宙における日本の防衛インフラ構築が進み、地上の観測活動や弾道ミサイル対処といった分野でも宇宙への依存が大きくなると、宇宙空間における防護は安全保障上の重大課題となってくる。しかし、日本のSSA体制が整うのはもう少し先になる。

 防衛省やJAXAの各施設は2022年度までに完成し、自衛隊の宇宙監視部隊も同年度に設立され、実際の監視活動は2023年度開始とされている。しかし、地上から宇宙を監視する以上、国際的な協力ネットワークは不可欠だ。既に2013年に日米SSA協力取極が締結されており、日本は米国の監視ネットワークと情報共有し、東アジアにおける監視を担う。

 ところで、2018年は陸軍と海軍の航空隊を統合して、世界初の空軍であるイギリス空軍が誕生してから100年目の節目だ。また、近年、陸海空に続く軍事上の新たな作戦領域として、宇宙空間、サイバー空間が挙げられている。トランプ大統領は、陸海空軍・海兵隊・沿岸警備隊に続く第6軍として、宇宙軍創設を指示している。自衛隊の宇宙監視部隊は、航空自衛隊に設置されると思われるが、発足時は航空自衛隊の一部隊に過ぎない宇宙監視部隊も、将来は新たな自衛隊として独立する日が来るのだろうか。

この記事の写真(5枚)

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー