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二岡新監督へのバトンタッチ

「伊藤監督には、基本的にやりたいようにやらせてもらいました」と言う乾真大投手(30)は、昨季14勝を挙げたエースで、チームの柱だった。今季は投手コーチを兼任する。

 日ハム・巨人とNPBを経験した左腕は、伊藤と同様2018年に入団した。伊藤からは「打たれていいから何でもやれ」と言われ、本当にありがたかったと振り返る。

「NPBではほぼストレートとスライダーしか投げられなかったんです。でもツーシームとかシンカーとか、投げられなかった球種を投げられるようにしたくてここへ来た。試合で投げてみろ、打たれてもいいから色んなボールでストライクとれ、と言ってくれた。それが大きかったですね」

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 アドバイスをもらい、それを次の試合に実行して生かし、1年の最後には多彩な球種でストライクが取れた。自分の成長を実感した。

昨季14勝を挙げた乾真大

 伊藤前監督とのエピソードとして「キャッチボールであんなに怖いと思ったのは初めてです(笑)」と語る吉田凌太投手(20)は富山出身。同郷のヤクルト中澤雅人とは子供の頃に親交があり、目標とする投手は「石川雅規」。自然と応援してしまう小柄な左腕だ。

 スピンの効いたキャッチボールのほか、スライダーの回転分析でも「ホップ成分のある横回転」で選手達を驚かせたというから、伊藤智仁のボールは今も健在らしい。

「試合では失敗を恐れず何でもチャレンジさせて頂きました。ストライクはいつでも取れる自信があるので、そのストライクをどう取るか色々試しました。結果的にシーズン終わってみると、ストライクを取れるパターンが増えて投球の幅が広がっていました」

 吉田も「監督に怒られたことはない」と言う。伊藤を支えとし、思い切り挑戦を繰り返して、選手達は自分を成長させることが出来た。

「伊藤監督が残したものを、それぞれがどう生かしていくかが結果に繋がると思います。二岡監督になって攻撃力が上がれば、理想の野球が出来るチームになれる」。そして、「今季の富山は強い自信があります」。吉田はそう言いきった。

 その他にも伊藤前監督からスライダーを伝授され、抑えで活躍した菅谷潤哉投手(24)や、楽天・ヤクルトに在籍した榎本葵外野手(26)も残留する。榎本は伊藤が声をかけ昨季途中に入団した。伊藤もはっきりと「榎本が入ってからチームの打撃が良くなった」と言っていた。攻走守にその存在は大きい。

伊藤前監督が声をかけ昨季途中に入団した榎本葵 提供/HISATO

 昨年後期の優勝時は、投打が噛み合い勝ちを重ねた。今季のチームは「やはり乾と榎本が中心になるでしょう」と大士コーチは言う。「しかし二人に頼るのではなく、全体がレベルアップして二人がサポートに回るぐらいになれば」。選手の話からは、昨年成長を強く実感したことが窺えた。新戦力も含め、今年の変化が楽しみだ。

 伊藤智仁は、企画でも人を驚かせた。篠塚和典氏を招いて再対決。古田敦也氏を招いて逆バッテリーの始球式。後期優勝ではビールかけ。地方番組などにも積極的に出演した。チームにも地域にも溶け込んでいた様子が、周りの話から窺える。富山のために、球団と選手のために、伊藤は様々に考え尽力していた。今季、二岡新監督がどんなアイディアを見せるのか注目したい。

 1月12日。ショッピングモールでの新入団選手記者会見には、例年以上の人が詰めかけた。二岡新監督を迎える周囲の熱気は予想以上だ。大部分の選手にとっても「子供の頃のヒーロー」「スター選手」である二岡智宏。監督就任のニュースには、皆目を輝かせたという。伊藤のインスタには二岡との笑顔のツーショットがアップされた。期せずして実現した「智さん」リレーは、最強の継投となるかもしれない。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

サンダーバーズ監督! #二岡智宏 #富山GRNサンダーバーズ #東北楽天ゴールデンイーグルス

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