文春オンライン
文春野球コラム

新潟の「球数制限」は実現するか? 猛反発する日本高野連の時代錯誤

文春野球コラム ウィンターリーグ2019

2019/02/10
note

 時代は動いている。

 1月25日に都内の外国特派員協会で行なった会見で、横浜DeNAベイスターズの筒香嘉智外野手が高校野球のあり方についてかなり踏み込んだ発言をしたのは、保守的な選手が多い野球界では異例といえば異例の出来事だった。

「高校の部活に大きなお金が動いたり、教育の場と言いながらドラマのようなことを作ったりすることもある」

ADVERTISEMENT

 こう語った筒香は、その背景にあるメディアの存在までをも見据えてこう喝破した。

「新聞社が高校野球を主催しているので……。(メディアの側にも)子供たちにとって良くないと思っている方がたくさんいると思う。高校野球が悪というか、全てを否定しているわけではないですが、子供たちのためになっていないという思いを(メディアが)なかなか伝えきれていないのが現状だと思います」

 自らも高校野球の世界を通り抜け、プロでは日本代表の4番を務めた現役のトップアスリートの厳しい言葉は、これもまた一つの時代の変化の象徴でもあるはずだ。

高校野球のあり方についてかなり踏み込んだ発言をした筒香嘉智 ©文藝春秋

筒香発言に鈴木大地長官も続いた

 そしてこの筒香の発言に呼応して動いた人物がいる。スポーツ庁の鈴木大地長官だ。2月4日に共同通信のインタビューに応じた鈴木長官は高校野球の球数制限導入に言及。

「(高校野球に)人生を賭ける、肩が壊れてもいい、という人もいる。それは個人の自由かもしれないが、世間がそういう空気、流れを作っているかもしれない。若い人にはその後の進路など色々な可能性がある。自分の可能性を低く見積もらないでほしい」

 こう語り球数制限が投手の豊富な有力校に有利になるという意見に対しては「怪我をしないことが大事であり、生徒を守る学校の姿勢が共感を呼び、受け入れられるようになってほしい」と勝利至上主義ではなく、生徒を健全な心と体で社会に送り出すことが、学校スポーツの大きな役割だと強調した。また部員不足には兼部などで生徒が様々な競技にトライできる環境を作るのが、少子化の中では必要だとも訴えている。

スポーツ庁の鈴木大地長官 ©文藝春秋

新潟県連の球数制限に日本高野連が猛反発

 実は鈴木長官の唐突とも思えるこの発言には、明らかに新潟県高野連が今春季大会で導入しようとした球数制限問題が背景にあった。

 昨年12月に新潟県連が独自に春の県大会で1人の投手が投げられる球数を100球まで(到達イニングの最後まで)という球数制限の試験的導入を決めたが、これを発表すると日本高野連が猛反発。高校野球特別規則に規定がないこと、また県大会を勝ち上がって参加する北信越大会とルールが統一されないことを理由に、2月20日の理事会では新潟県連の決定を認めない方向と言われている。

 そうした動きを牽制するように鈴木長官は「新潟のような動きをきっかけにして、全国実施の議論になるのではないか。新潟やプロ野球DeNAの筒香嘉智選手らの、何かを変えようという勇気を応援したい」と改革派へのエールを送ったわけである。

 実は鈴木長官だけでなく、つい最近にも高野連の古臭い体質に批判の声を挙げた人物はまだいる。

文春野球学校開講!