「(日本高野連の)頭の中は明治から変わっていない」
日本トップリーグ連携機構の川淵三郎会長も、「(日本高野連の)頭の中は明治から変わっていない」と痛烈な言葉を浴びせて批判する一人であった。
ことの発端は昨年12月、高知商業高校の野球部員が、同校ダンス同好会の有料イベントにユニフォーム姿でゲスト参加、甲子園大会の試合の一部を再現するパフォーマンスなどを行なったことだった。これを日本高野連が問題視。学生野球憲章が禁ずる「野球部員の商業的利用ではないか」として、同校野球部長の謹慎処分を日本学生野球協会審査室に上申する決定をしたことだった。
だが、有料イベントといっても実態は会場費のために一人500円を集めただけで商業目的などではなく、野球部員が参加したのも夏の大会でダンス部がチアリーダーとして応援をしてくれたことへの感謝の思いからだった。そうした背景が明らかになるにつれ、この杓子定規な処分の上申には異論が噴出したのである。
1月15日に高知を訪れた際に、この話を聞いた川淵会長は「最初は野球部員がダンスなんて素晴らしいと思っていたら、高野連が問題にしているという。こんなバカげた話があるか!」と怒りのツイート。同26日に行われたイベントでも「いま最も怒っているのは高野連のこと」と、アマチュア野球界の体質を「旧態依然」と大批判。
「スポーツ界はいま、大きく変わろうとしている。野球界も基本的な構造から変わるチャンス。野球界がいまのままでいいと思っているなら、それが一番の問題です」
こう時代感覚とずれた日本高野連の体質に鋭く切り込んだのである。
その結果(と日本高野連は当然、認めないが)日本高野連は高知商の処分の上申を保留し、改めて2月13日の全体審議委員会で再討議することを決定。
「イベントの主体が学校であることに関して、商業利用に当てはめていいのか再討議する必要があると判断した」(竹中雅彦事務局長)
あくまで最初の決定の「非」は認めないが、それでもあまりに甚だしい事実誤認と時代錯誤な学生野球憲章の解釈への世間の批判に、さすがに方向転換せざるを得なかったというのが実情だった。
新潟の球数制限は実現するか
一方の新潟の球数制限に関しては、現時点でも日本高野連の方針は否決の方向で流れているという。
今回の球数制限は新潟県高野連の理事会、評議委員会、監督など現場を含めた連絡会議で正式に機関決定して、ある意味、県レベルの手続きに瑕疵はないものである。県連主催の県大会で実施した後、北信越大会では制限なしのルールでやればいいだけの話だ。何よりこれだけ球数制限の必要性が俎上に載る中で、とにかく一度、実際の大会でやってみる意義は大きいはずだ。やってみないことにはどういう問題があるのかも分からない。
「だからどうぞ、新潟を使ってください。実際に球数制限を実施した試合、大会のデータはすべて公開しますし、それを元にもっと様々な建設的な討議を進める材料にしていただければいいと思っています」
こう語るのは全県的な野球組織「21c型穂波(にいがたほなみ)プロジェクト」の島田修プロジェクトリーダーである。
そうした流れの中で全日本軟式野球連盟では小学生がプレーする学童野球で投手の球数を70球までとする球数制限をし、その他にも1週間の総投球数を300球以内、年間試合数を100試合以内とすることを全国評議員会で正式決定する見通しだ。
何が選手に一番なのか。プレーヤーズファーストは明らかに時代の流れである。選手の主体性を重んじ、選手の成長を手助けする組織と指導者こそが時代のニーズである。そのことを敏感に感じ取るからこそ筒香も、鈴木長官も、川淵会長も、軟式野球連盟も発信し行動するのである。
権威をかざし、それに反対する日本高野連だけが、時代から取り残されてしまっている。
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