復帰戦で見せたムキになって投げる姿
今年2月21日で、和田は38歳になった。
ホークスに復帰した頃から、よく「ワッチは昔と変わらんよね~」などと会話をするが、和田はきまって「そんなことないですよ。白髪だって増えました」などと笑って返してくる。ここ数年はそんなやりとりを繰り返している。
「ピッチングスタイルも変化していかないと。若い頃みたいにストレートでばんばん空振りをとれるわけではないから」
いつの世だって若者は理想を追いかける。かつての和田もそうだった。
「真っ直ぐで三振をとれないと面白くない(笑)。当然、変化球での三振も面白いですけど、結局は真っ直ぐあっての変化球。あ、タイミング合ってないな。『ほら、どや!』『ハイ振った!』みたいな感じで(笑)。やっぱり真っ直ぐあっての自分ですから。それに今は高めは面白くなくて。高めは目の錯覚で空振りしちゃうこともあるんです。だけど、低めでの空振りは違う。これほど快感なものはないなと最近感じるんです」('11年1月のインタビューより)
こだわりのストレートは、じつは球速だけを見れば若い頃より今の方が圧倒的に速い。復帰2戦目だった12日の阪神戦では145キロを計測している。だけど、和田は納得していない。たしかに、速いのに真っ直ぐで空振りが取れていない。投球フォームに修正すべきポイントがあることを彼自身自覚している。
また、復帰登板を経て「自分自身のピッチングも変化していかないと」とも言った。5月下旬にファーム本拠地のタマスタ筑後で、同級生の松坂のピッチングを目の当たりにして感じた部分も大きいのだろう。
だけど、思う。
復帰初戦の初回の立ち上がり、ベテランらしからぬ力んだ表情で目一杯腕を振って勝負を挑んでいた。「あんなことやっちゃいけないんですけどね。だから中盤に球威が落ちた」。そして、黒星を喫した阪神戦では、前の打席で本塁打を打たれた梅野にさらに痛恨の2点適時打を許してしまった。
プロは結果だ。本来間違っているかもしれない。それでも、ムキになって投げる和田の姿は見ていてちょっと嬉しかった。ほら、やっぱり、まだまだ若いじゃないか。
梅野のタイムリーの場面はランナー二、三塁だった。四球で歩かせても良かった。だけど敢えて勝負に行ったのだ。その心意気だ。そんな和田を、思い出の神宮のマウンドがもっと後押ししてくれるのではと、期待していたのだ。
和田の登板は実現しなかったが、ワセダの後輩である大竹耕太郎が20日のヤクルト戦で先発をする。「僕、大学時代に結構打ってるんですよ。確か2割5分くらいは。しかもプロに入った投手からも」。調べてみると4年間通算で60打数16安打、打率にして2割6分7厘。2年生春季リーグでは本塁打を放っていた。相手は立教大の右腕で現オリックスの澤田だった。「バントのサインで、相手守備が前進してきたらバスターだったんです。一塁手が突っ込んできたからバットを引いて思いっきり打ちにいったらホームランになっちゃいました(笑)」。今年の神宮交流戦の新しい楽しみが、とりあえず一つ見つかった。
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