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高津野球=野村+若松+オジー・ギーエン+奥川恭伸

 一軍監督就任記者会見において、高津監督は自分が仕えた歴代監督の名前を挙げながら、「それぞれの監督のいいところを真似していく」という趣旨の発言を行っている。同様に、前掲書でも若松勉監督のおおらかさを指摘し、「プロの監督、特に一軍監督としての理想像だと思う。選手たちを大人として扱ってくれたのだ」と絶賛。そして、シカゴ・ホワイトソックス時代のオジー・ギーエン監督については自身が打たれた試合後のエピソードを紹介している。

〈僕が大切な試合で打たれてしまい、試合が終わってからクラブハウスで落ち込んでいると、「どうしたシンゴ、何を落ち込んでいるんだ。まぁ、飲め」と言いながらビールを差し出してくれた。(中略)アメリカではこんな形で監督と選手の距離を縮める方法があるのかと驚いた。この時の経験を、僕はいつか生かせないかと思っている〉

 この一節からは、高津監督が目指すのは「監督と選手との距離が近い関係」を理想としていることが伝わってくる。そして、「目指すべき監督像」を次のようなフレーズで端的に表現している。

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〈僕は、野村監督の下でたっぷり勉強し、若松監督の下で責任を感じながらプレーし、そしてオジーのお祭り野球を体験してきた。いまは日本にはないオジーのアプローチを、監督として実践したいという気持ちもある。しっかりと勉強をしたうえで、あとはエンジョイしておいで、と選手を送り出したいのだ〉

 つまり、「高津野球」とは、「野村の奥深さ+若松のおおらかさ+ギーエンの自由さ」をミックスした野球なのだ。二軍監督時代にはこうした手法で高橋奎二を一軍のローテーションピッチャーへと脱皮させ、村上宗隆を稀代の大砲として覚醒させた。そして、いよいよ一軍監督として、その手腕を発揮するときがやってきた。最下位に沈んだ19年。もう失うものは何もない。「野球好きなら、誰にも負けない」と豪語する男が目指す、新しいヤクルトの野球。高津監督の目指す新しい野球に期待したい。期待するしかないではないか! なぜなら、就任早々、あの奥川恭伸(星稜高)を自らの手で引き当てたのだ。幸先のいいスタート。もはや「希望」という言葉しか浮かばない。

奥川恭伸の交渉権の当たりくじを引いて喜ぶ高津臣吾監督

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