3階と4階を勝手に繋げて“メゾネット”に
焼身自殺があった部屋は302号室だったのですが、そこを購入したのは402号室、すなわち天井を挟んで真上の部屋に住んでいた人物でした。かつて3階で焼身自殺があったことは百も承知、そこが紛れもない事故物件であることを理解している人が、あえて落札したのです。
その住人は何のために、わざわざ真下の事故物件を購入したのか……。おそらく周囲の人たちも訝しんだことでしょう。しかし、その答えはすぐにわかります。その住人は落札後、3階と4階の部屋を勝手に繋げてしまったのです。
今まで住んでいた4階の部屋の床部分をぶち抜き、階段を設置して3階と繋げる。そのような“リフォーム”を施すことで、自らの住まいをメゾネット(デュープレックス)のような形に仕立て直してしまったのです。
数年後、その住人もまた……
おそらくその住人は、それまで住んでいた4階の部屋を手狭に感じていたのではないでしょうか。そんなタイミングで、真下の部屋でたまたま焼身自殺があり、そこが事故物件として競売にかけられることになった。引っ越すのが面倒くさかったのか、それともそのマンションが気に入っていたのか、ともかくもその住人は「これはラッキー」とばかりに落札。事故物件に住むことに、特に抵抗がない性格だったのでしょう。そして当初の思惑通り、3階と4階を繋げて広々と暮らし始めたわけです。
しかし、それから数年後――。事態は思わぬ展開を見せました。真下の事故物件を購入し、自分の部屋と繋げたその住人もまた、自ら命を絶ってしまったのです。自殺の現場となったのは、その人物が勝手に設置した階段でした。階段があるのは、空間上は3階の部屋のなかですから、結果的には同じ部屋で立て続けに2人が自殺した、ということになります。