ベストナインにも選出されたメキシコ代表の元助っ人たち
かつては、メジャーリーガーの産地、ドミニカとプエルトリコが覇を競い、その後、ベネズエラがその間に割って入っていったカリブ冬の野球の勢力図だが、高給取りとなったメジャーリーガーがもはや参加しなくなった現在では、国内に夏のプロリーグをもつメキシコが頭ひとつ抜け出る存在となっている。今大会は、ベストナインに半数の5人を送り込むなどその実力を見せつけたものの準決勝で敗退したが、ここにも元助っ人がふたり顔をそろえていた。
まず1人目は、ラミロ・ペーニャ。彼は他の選手と違い、ながらくバイプレーヤーとしてメジャーに在籍、2016年秋に行われた侍ジャパンの強化試合のメキシコ代表のメンバーとして来日し、広島のエース、野村祐輔からホームランを放っている。これがきっかけになったのかどうかはわからないが、そのオフに広島と契約、現役メジャーリーガーとして活躍が期待されたが、V2を目指すこの年は、投のジョンソン、ジャクソン、打のエルドレッドにバティスタと他の助っ人の壁は厚く、数字を残すことができなかった彼もやはり1年で退団となった。
広島退団後は母国メキシコに帰り、夏は故郷の名門チーム、モンテレイ、冬は今回カリビアンシリーズに出場したクリアカンという人気チームの主力としてメキシコ球界を代表する選手となっている。昨年のプレミア12の代表選手には選出されなかったが、この夏のオリンピックには是非とも出場したいとのこと。ただし日本球界の復帰については、「日本には行きたいけど、観光旅行で十分だよ」とあまり乗り気ではないようだった。
ペーニャは、昨年春の侍ジャパン強化試合でも来日しているが、この強化試合でオリックスの新助っ人としてメキシコ代表チームの4番に座り、侍ジャパン投手陣に対し2試合で5安打、ツーベース4本とその活躍を期待させたのがジョーイ・メネセスだ。メジャー経験はないものの、マイナーの有望株として他球団のスカウトも注目していた好打者だったのだが、「外国人選手あるある」でシーズンに入ると期待の打撃はさっぱり。二軍落ちした上、挙句の果てはドーピング検査にひっかかり、速攻で退団となってしまった。
その後のシーズンは所属球団はなかったが、ウィンターリーグには例年どおり参加。3割をマークし、春からのマイナー契約を勝ち取った。オリンピックについては、例の件もあり微妙な反応しか返ってこなかったが、夏にはきれいな体で正々堂々と戦ってほしいものだ。もっとも、彼はまだ27歳。真の目標はメジャーの舞台だろう。このカリビアンシリーズでもメキシコの4番ファーストに座り、セカンドのペーニャとともにベストナインに輝いていた。
各国がプライドをかけ、メジャーの主力をずらっと並べて覇を競ったのも今は昔。マイナーリーガーたちの集まる野球の祭典となってしまったカリビアンシリーズだが、参加する個々の選手たちは、それぞれにドラマを抱えて懸命にフィールドを駆け回っていた。
◆ ◆ ◆
※「文春野球コラム ウィンターリーグ2020」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/33854 でHITボタンを押してください。
この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。