「業界破壊企業」という言葉を知っているだろうか? スゴいビジネスモデルやテクノロジーで破壊的なイノベーションを起こす新興企業のことだ。

 ロックダウン(外出制限)の続くアメリカ。新型コロナの経済的な影響も深刻になっているが、直近の四半期で66%も売上を伸ばしたスタートアップがある。それが在宅フィットネスの「ペロトン」だ。同期間に会員も約2倍に増えたという。

 新著『業界破壊企業』(光文社新書)で最新のスゴい企業を20以上紹介する起業家の斎藤徹氏が、世界から注目を集める「ペロトン」のビジネスモデルを紹介する。(全2回の2回目/前編から続く)

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「24万円のバイク+月額4000円」のサブスクモデル

 Peloton(ペロトン)のビジネスモデルはフィットネス用のバイクを販売し、在宅でワークアウトができるというものです。

 Peloton専用のバイクには大型モニターが付いていて、画面に流れる動画を見ながら、ユーザーは家庭でフィットネスを行います。

 バイクの販売価格は約2200ドル(約24万円)。動画を見ながらの受講はサブスクモデルとなっていて月額39ドル(約4300円)で、どんなクラスも受け放題となっています。

 これだけ聞くと「そもそも20万円以上もするフィットネスバイクを買うだろうか」と思う人もいるでしょうし、月4000円以上払って、自宅で動画を見ながらバイクをぐというフィットネスがどれほどウケるのかと疑問を持つ人もいるでしょう。

 ところが、これが全米で大ウケなのです。

ペロトンのバイク(約24万円)に乗り、自宅でフィットネスに取り組む。月額は4300円程度 ©︎getty

 理由はいくつかあるのですが、まずは何といっても魅力的で、バリエーション豊かなインストラクター陣です。

 そもそもPelotonは、最初から「在宅でのフィットネス」を展開していたわけではありません。一般のスポーツジムと同じように実店舗を持っていて(現在も実店舗は存在している)会員はそこへ行って体を動かすという、ごく普通のフィットネスジムでした。

 ただし、ワークアウトのスタイルは特徴的で、薄暗いスタジオにフィットネスバイクがズラリと並び、クラブを思わせる音楽がガンガン流れ、これまたクラブと同じような照明のなか、バイクを漕ぐというハードなもの。

 最前列には、テンションが高く、場の空気を一気に盛り上げるようなインストラクターがいて、一緒にバイクを漕ぎながら、ときに厳しく、ときに優しく声をかけ、参加者みんなで汗をかくというスタイルです。

 そんなプログラムとインストラクターが話題を呼び、人気のクラスは予約が取れない状況が続くようになり、その打開策として「自宅でできるオンラインのワークアウト」へと進化していったのです。