新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、各分野への自粛要請が続いている。飲食店などでは営業再開の動きもあるが、エンターテインメント業界の先行きはいまだに見えない。
特にコンサートや演劇などのライブイベントは「3密」を回避できないため再開の見通しが立たない。「プロレス」もその一つだ。
プロレスは2月後半から興行中止が続出し、3月中にはほぼすべての団体が活動停止。無観客で試合をライブ配信している団体もあるが、観客を入れた興行再開の目処は6月以降といわれている。(取材・文=素鞠清志郎/清談社)
3密が直撃 興行が打てないプロレス
プロレスは、紆余曲折を経て何度目かのブームを迎えようとしていた。
「ここ数年、プロレス業界は最大手の『新日本プロレス』を筆頭に人気が盛り返しており、プ女子と呼ばれる女性ファンや、新たな世代のファンを取り込んで市場が拡大していました。新日本プロレスは、カードゲームやアニメコンテンツなどを手がける『ブシロード』が親会社となってから飛躍を遂げましたが、ブシロードは去年末に女子プロレス団体の『スターダム』も買収して、さらなる拡大戦略を取っています。一方、様々な仕掛けで『文化系プロレス』と呼ばれて躍進していた団体『DDT』を、サイバーエージェントが買収し、ネットテレビのAbemaTVで試合中継を配信するなど新たなビジネスモデルを構築していました」(プロレス記者)
サイバーエージェントは、今年の1月末に「プロレスリング・ノア」も買収するなど、プロレス業界の再編が進んでいたところに今回のコロナショックが襲いかかった。
興行中止で試合が行えないとなると、プロレスラーたちも身動きが取れない状態が続いている。
「大手の団体に所属しているレスラーたちは、他のプロスポーツのように年契約となっており、試合が無くても一定の給料が支払われます。しかし、その他ほとんどの選手は『ひと試合いくら』という歩合制で、試合で手に入るギャラ以外はTシャツなどのグッズの売上げが主な収入源。ただ、そうしたグッズは会場内でファンに手売りすることが多いので、興行がないと販売機会が失われて売上も見込めないんです」(前出・プロレス記者)