「ついカッとなって…」。自らの欲望のおもむくままに生き、知的障害のある女性を内臓破裂、顔が変形するまで殴った殺人犯の男。すでに時効と主張する男に対して、裁判所がくだした罰とは…? 2011年に起きた事件の顛末をお届け。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の2回目/最初から読む)
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殺人容疑で指名手配
警察はA子さんの死亡を確認。司法解剖の結果、彼女は20ヵ所以上も骨折し、腹腔内多臓器損傷という重傷を負っており、警察は殺人事件とみて、南田を殺人容疑で指名手配した。
一方、南田は「時効まで逃げよう」と決意を固め、サウナに潜伏していたとき、以前に服役したときに知り合ったヤクザと再会した。
「それだったらオレの知人の手配師のところへ行けばいい。仕事を紹介してもらえるように頼んでやる」
それで南田は遠方の地方都市に移動した。「高山和男」「山本勇二」という偽名を使い、「借金を抱え、ヤクザに追われて逃げてきた」という作り話で、周囲の同情を引いた。
南田は熱心に働き、ある土木会社の従業員寮には6年も住んでいた。だが、南田はふと目にしたテレビ番組で、自分が指名手配されている現実を知った。『全国警察犯罪捜査網』という特番で、大物タレントである司会者から「南田遼太郎、お前は逃げられないぞ!」と名指しされ、それを同僚に気付かれたかもしれないと怖くなり、突然従業員寮からいなくなった。
その後、逮捕されることになる別の地方都市に移り住み、そこで「松川信明」という男の戸籍を買い、その男になりすまして生活保護まで受けていた。
それでも警察に捕まらず、2010年4月に殺人罪の時効が撤廃されると、開き直ってその男の名前で人生を送ることにした。
しかし、生活が安定してくると、女で飯を食おうとするのが南田の悪いクセで、警察にDV被害を訴えた女性も南田にショッピングセンターで声をかけられ、「同居しないか?」と誘われていた。
「好きなだけいていいから。部屋は自由に使ってもらってかまわない。食費をカンパしてもらうか、仕事がないときにオレの相手をしてくれれば、それでいいから」