「殺して独占するしかない」――地下アイドルの女性を殺害、遺体を欲望のおもむくままに損壊した37歳のアイドルファンの男性。なぜかつて推していた女性に対して、残酷な仕打ちをしたのか? この恐るべき事件の顛末を、ノンフィクションライターの諸岡宏樹氏の著書『実録 性犯罪ファイル 猟奇事件編』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全3回の1回目/続きを読む)

写真はイメージ ©getty

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「人を殺してきました」

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 未明の交番にコンビニ店員の渡辺敏郎(当時37)が訪ねてきた。

「どこで殺した?」

「この近くのホテルです」

 渡辺の案内で警察官がラブホテルの一室に向かったところ、浴室の中で倒れている小山有希さん(当時18)の遺体を発見した。

「うっ…」

 その場で完全に死亡していることが確認された。なぜなら有希さんの遺体は頭部が切り離されていたからだ。しかも渡辺は頭部の写真をスマホで撮っていた。

「何のためだ?」

「自殺しようと思って…。もし自分が死んだら証拠を話す人がいなくなると思って、ホテルにいた証を残すために撮りました」

殺害理由は…

 この奇妙な事件が幕を開け、警察署に捜査本部が設置された。調べに対し、渡辺は次のように説明した。

「彼女とは1年ほど前にメイドカフェのイベントで知り合った。自分は交際していると思っていたが、彼女の携帯を盗み見て、他にも男がいることが分かったので殺そうと思った」

 つまり、個人で活動する地下アイドルと、その“推し“によるトラブルと判明したのだ。

写真はイメージ ©AFLO

 有希さんは家庭環境に恵まれず、3歳のときに両親が離婚した。

 16歳年上の姉、14歳年上の兄、2歳年上の姉とともに育った。

 父親は精神的に病んだ状態で、十分な養育費を送れなかった。有希さんが中学の頃には母親も精神的に病んでしまい、家計はいっそう苦しくなった。

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