アメリカのトランプ大統領による一連の関税措置で世界経済は大混乱だ。株式市場は毎日ワシントンから流れてくるトランプ節に右往左往の状態にある。トランプは世界中を相手に自国に不利益になっている(と信じている)貿易収支を改善することに血眼になり、対する諸外国首脳は、これがトランプ得意のただのディールであるのか、本気で仕掛けてくるのか疑心暗鬼に陥っている。

関税について発言するトランプ大統領 ©時事通信社

 さて、こうした状況下で日本の不動産マーケットには影響があるのか、それとも何もないのかを考えてみよう。

日本から見た貿易相手国としてのアメリカ

 まず、日本にとってアメリカは貿易相手国としてどんな存在になっているのだろうか。多くの日本人はアメリカが相変わらず最大の相手国だと思っているようだが、現実はやや異なる。2023年において輸出だけ見ればたしかにアメリカは1位であるが、輸出入額の合計値では中国が42兆円とアメリカ32兆円を大きく上回っている。アメリカへの輸出を品目別にみると、自動車やその関連部品、原動機でおおむね40%程度となる。以前は電算機類や半導体等の電子部品、光学機器などを多く輸出していたが、今やほぼ自動車一本足打法になっている。輸入については医薬品、石油ガスなどが主体だ。

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 アメリカへの輸出入が拡大しているかと言えば、1995年と2023年を比較し為替レートで調整すれば、輸出は19.7%、輸入は9%の伸びに過ぎない。一方同期間で中国は輸出で5.63倍、輸入で4.88倍と急増している(税関資料および世界経済のネタ帳による)。

現代の日本は完全な輸入大国に

 関税措置が実施されると大きな影響を被るのが自動車産業であることは明白だ。彼らは日本からの直接の輸出だけでなく、隣国のカナダやメキシコからも輸出しているので、経営的には大打撃となる。

 自動車産業は関連産業が多く、日本経済への影響は小さくないが、現代の日本は以前のような輸出大国ではなく完全な輸入大国である。また日本は世界一の金融大国でもある。日本の対外純資産残高は2023年末で471兆3061億円と33年連続で世界一の座にあり、この資産の運用で儲けているのである。仮に年2%で運用しているとすれば、対外資産の運用益は9兆円を超えることになる。