売却される日本の不動産

 さて国内外の投資家の懐が痛んでいる。円高で外国人投資家はいったんエグジットして手じまいし、現金のポジションを増やすため、あるいは金融資産でのマイナスを日本の不動産を売却することで穴埋めしようとする可能性がある。

麻布台ヒルズ周辺の街並 ©GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

 これまで富裕層や国内外の投資家の投資マネーによって我が世の春状態にあったマンションマーケットに北風が吹きつけるかもしれない。

 世界的な不況は、上昇を続けていた建設資材価格をクールダウンさせる可能性がある。日本は建設資材のほとんどを輸入に頼っている。資材価格が下がり、さらに円高になれば暴騰を続けていた建設費の上昇にブレーキがかかることも期待できる。各国のアメリカ向けの輸出が激減することでエネルギーコストが下がる。資材を運搬するエネルギーコストも下げられるだろう。

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 こう考えてくると、とにかく家を買いたい、自分たちが住むためのマンションが欲しい一般庶民にとって、悪い話でもなさそうに思えてくる。

マンションを手に入れたい一般庶民にとって“期待できること”

 まずしばらく利上げがないということは新たに住宅ローンを組む人にとっても、すでに変動金利型住宅ローンを組んでいる人にとっても朗報だ。固定金利も最近はメガバンクの提示する長期プライムローンがやや低下している。固定金利の選択も出てきそうだ。

 建設費が下落すれば、新築マンション価格が下がるかもしれない。デベロッパーは下げようとしないかもしれないが、富裕層や投資家に見放されたマーケットで、これまで半ば無視していた一般庶民にデベロッパーも再び微笑んでくれるようになるかもしれない。

 円安のせいで、上がり続けていた食料品、ガソリン代も落ち着くかもしれない。高額で手が出なかった中古マンションも損切りをする投資家が増えれば、価格が安くなる可能性だってある。マーケットから外国人の姿がなくなれば、価格が安くなるだけでなく、再び日本人だけが住むマンションが増えてコミュニティが安定し、ストレスが少なくなるかもしれない。

 住まいを手に入れたい一般庶民にとって、今回の騒動はどうやら都合の良いストーリーを描くことができるかもしれないのである。

 ただし、世界的な不景気はすべての分野で世界とリンクしている日本経済全体の不景気に通じてしまうことを忘れてはいけない。自分の仕事は海外とは関係ないと思っていても、日本経済は世界なくしては成立しないマーケットになって久しい。やはり自分だけが良い目を見るのは難しい。トランプ関税、当面は固唾をのんで見守っていこう。