日本銀行は7月31日に開かれた金融政策決定会合において、誘導目標を0.25%とした政策金利の追加引き上げを決定した。この影響は想定以上に大きく、東京株式市場が過敏に反応。8月5日の日経平均株価は前週末比4451円28銭下落、3万1458円となり、史上最大の下落額、下落率でも1987年のブラックマンデーに次ぐ記録となった。

 その後株価は持ち直し基調にあるが、これまで長くほぼ金利のない世界が続いてきた日本で金利変動のもたらす影響の強さをあらためて味わう出来事となった。

不動産マーケットへの影響は?

 金利は為替にも影響を及ぼす。欧米と日本との金利差の広がりは極端な円安を招聘し、食料など多くを輸入に頼る生活物資の値上げをもたらしたとされる。金利を引き上げることで金利差は縮小。円相場も一時の1ドル160円超から140円台後半まで円高に転じている。

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 さてこうした金融マーケットの大きな変化は日本の不動産マーケットにどのような影響を及ぼすかについて触れたい。

写真はイメージ ©Nobuyuki_Yoshikawa/イメージマート

 多くのメディアで取り上げられたのが住宅ローンだ。新規住宅ローンの約7割から8割が変動金利の商品を選択しているのが昨今の状況だ。変動金利は言葉どおり金利の変動に応じて返済額が増減する。したがって今回の金利引き上げが既存の住宅ローン利用者およびこれから住宅を購入しようとしている人たちにどのような影響をもたらすかにメディアが注目するのは当然だ。

住宅ローンを変動金利で利用している人は…

 まずすでに住宅ローンを変動金利で利用している人たちにとっての影響を考えよう。変動金利型の住宅ローンは基本的に短期プライムレートに連動する。短期プライムレートとは金融機関が優良企業向けに貸し出す最優遇金利で1年未満の貸付期間に対応するものだ。変動型住宅ローンは短期プライムレートを基準としてこれに各行がスプレッド(上乗せ金利)を乗せた金利にしている。短期プライムレートは政策金利と関係していて、今回の日本銀行の金利引き上げは当然、各行の短期プライムレートにも引き上げの圧力が加わる。

 実際に日本銀行の発表以来、各行は相次いで短期プライムレートの引き上げを発表している。引き上げ幅は0.1ポイントから0.25ポイント程度で引き上げ分を住宅ローン金利の引き上げに上乗せし始めている。10月頃までには各行の引き上げが出そろい、実際に既存ローン利用者の金利に適用されるのは来年1月くらいというのが流れだ。