0.15ポイントの金利引き上げを決定したある金融機関のローンで考える。高騰を続ける東京都内のマンションでは夫婦で1億円程度のローンを借りている世帯は少なくない。現状の金利が1%だとすると、35年ローン(元利均等返済、ボーナス払いなし)で毎月の返済額は28万2285円だ。引き上げ後の金利は1.15%。毎月の返済額は7000円程度上昇する。年間で8万4000円の負担増だ。生活物価の高騰が続く中で月7000円とはいえ、少なくない出費増である。
だが、これで収まればよいがそうはいかないのが金利だ。今後金利が上昇しないと願うのは自由だが、金融マーケットの恐ろしさを甘く見ないほうがよい。消費者物価指数は上昇が続き、GDPも4月から6月の速報値で対前期比0.8%増、年率換算で3.1%の増加。数値上では景気の回復が進む中で、更なる金利引き上げの可能性も見えてくる。これには更なる利上げの機会は現在の日本銀行にはないという見方が多いが、住宅ローン期間はもっとずっと長い期間のローンだ。これから同様のことが35年間全くないと考えるほうがお花畑だ。
金利変動リスクをもろにかぶる“長期ローン”
短期プライムレートは1年未満の貸付期間に対応しているのに、住宅ローンは最長40年まで。どうみても期間の合わない債権に適用している金利なのだが、住宅ローンのような長期ローンを組んでいる債務者(一般消費者)はこれからの金利変動リスクをもろに被る立ち位置にいることを悲しいほど理解していない。35年ローンを組んでいる人はこの先日本が35年間にわたってずうっと経済が成長しない国であってほしいと考えているようにしか見えない。たとえ日本が現実にそういう状態になったとしても世界マーケットにつながる日本の金融マーケットだけが独歩を続けられないことは今回の金利引き上げという判断をせざるを得なかった日本銀行の選択にも表れているのだ。
ローンを組んでいる人の中には、金融機関から当初5年間は借入総額が変わらないと言われたので影響はないと思う人がいるだろう。また6年目以降も年間返済額が借り入れ当初の返済額の最大1.25倍までに抑えられると説明を受けた記憶のある人もいるだろう。だがよく考えてほしい。返済額が変わらないということは返済額に占める元金返済額が減って金利分が増えるだけのことだ。つまり総返済額は残念ながら増額することに変わりはないのである。
では今から固定金利に借り換えようと思うかもしれないが、すでに金融機関各行の設定する固定金利はかなり上昇している。選択に迷うところだが、これまでが金利の底だとみるならば借り換えてしまったほうが結果は吉かもしれない。