日本は長らく「金利のない」世界にいた。事業を行うに際しても、オフィスビル建設などの設備投資を行うにおいても、ほぼ金利は無視できるほど優遇されてきた。2013年以降、国の狙いとしては大規模金融緩和を行うことで、企業の設備投資や新規事業開発を活性化させ、日本経済を浮揚させようとしてきたのだ。
活況になった不動産マーケット
ところが、企業側には国内で新たな設備投資を行うような資金ニーズは乏しく、新規事業開発に打って出るような勇気のあるサラリーマン経営者も少なく、国の思惑とは裏腹に、多額のマネーが流入した金融機関は、本当は資金を欲しているはずの新興企業に流すことなく、その多くを日本銀行の当座預金に預けっぱなしにする体たらくを演じてきた。
この状況を憂慮した日本銀行は当座預金をマイナス金利として少しでもマネーを世の中に還流させようと目論んだ。結果としてマネーの多くはデベロッパーやゼネコン、投資ファンドなどに流れ、不動産マーケットは活況になった。
長らく続いた低金利政策の終結
しかし、長期にわたる「金利のない」世界は日本社会に様々な歪みをもたらした。国内外金利差の広がりは急激な円安を誘発、食料やエネルギーの多くを輸入に頼る日本では生活物価は上昇、一部の富裕層が株式や債券、不動産投資でさらに富を蓄積するいっぽうで、一般庶民の年収は上がることなく、生活が苦しくなるばかりとなった。
このままでは日本人の生活が壊れてしまう、再びデフレに直面したら、もはや金利引き下げの余地がない=政策タクトを振れない状況になることを危惧した日本銀行はようやく2024年7月、政策金利の引き上げを発表。長らく続いた低金利政策の終結を宣言したのだ。
2024年12月の金融政策決定会合では、前日のニューヨークダウ下落の影響を考慮したのか、引上げを見送ったが、来年以降のしかるべき段階で、政策金利の引上げが想定されている。