不動産投資において、金利上昇が持つ意味合いとは
さて、「金利のある世界」に戻った日本で、これまで宴を享受してきた不動産マーケットはこれからどのようになっていくのだろうか。
長らく不動産と金融の世界に身を置いてきた私にとって、金利はとても恐ろしい存在にみえる。不動産投資において金利上昇が持つ意味合いは非常に重要であるからだ。
これまで投資利回りが3%台であっても積極的に都心物件を購入していた投資ファンドにとって、調達金利の引き上げは、当然ながら期待投資利回りを引き上げて考える必要が出てくることを意味する。通常投資利回りの善し悪しを判断するには、ベースレートとなる絶対安全といえる投資対象の利回り、例えば国債レート(10年物など)を基準に置く(現状は年1.065%)。そのうえで、どれくらいのリスクを覚悟するか(これをリスクプレミアムという)を上乗せして、投資利回りを決定する。
政策金利は、短期プライムレート(銀行などが設定する最優遇取引先に対する1年未満の貸出最優遇レート)に連動している。つまり調達レートが上昇することは、投資にあたってのマーケットリスクが高まることを意味するのである。
これまでは3%台前半でもOKだった投資にさらなるリスクプレミアムを乗せる必要があるかを投資家は判断しなければならなくなるわけだ。要求する期待投資利回りが上がれば、その分購入価格を下げるか、物件から得ることができる賃料収入が上がるという前提が必要になる。
賃料が期待通りに上がらない場合はどうなるのか
社会がインフレの状況になって賃料がうなぎ上りになっていけば、物件価格は下がらずに新たに設定した投資利回りを確保できるが、賃料が期待通りに上がらない場合は、投資目線(金額)を下げていかなければならなくなる。
2025年からの不動産マーケットはこの状況を見極める状況にある。大企業を中心として年収は上がる傾向にある。人手不足は全業界共通なので、企業は優秀な人材を確保するためには給与引き上げのみならず、社宅など福利厚生費の充実が求められるようになっている。賃貸マンションの賃料は今後の上昇が期待できるかと思う。
ただし、既存の賃貸住宅のテナント賃料をただちに上げることができるのかと言えば、日本の借地借家法は、借手側に非常に有利な設定になっている。家賃の引上げを大家が要求しても、テナントがこれを拒否(現状の賃料であることを主張)した場合、大家側は賃料引上げについて合理的な理由を提示し、テナントの納得をもらわない限り、値上げを実現できない。つまり、家賃上昇が世の中に広く定着していくにはかなりの時間がかかるということだ。