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働く場所はオフィスビルに限らない

 またオフィスビルについては、今後賃料を大幅に引き上げることができるかといえば、なかなか厳しいものがある。

 その大きな理由は人々の働き方が変化しつつあることだ。コロナ禍を契機に始まったリモートワークは、コロナ禍終息後にオフィスに戻る傾向を強めたものの一部で残り、リアルとリモートを組み合わせたハイブリッド型勤務を採用する企業が増えている。大企業を中心にリアル勤務は週に1、2回という会社はいくらでもある。人が家に住むというビヘイビア(生活様式)は変わらなくても、働く場所が必ずしもオフィスでなくても大丈夫であることを、コロナ禍では図らずも、壮大な社会実験のうえで証明してしまったのだ。

 こうした影響で昨今、都心にオープンする大規模オフィスビルのいくつかでは、計画当初に想定していた賃料水準に到底及ばぬ条件で、テナントと契約せざるを得なくなっている事例が後を絶たないという。表面的には高額の賃料条件で契約してもフリーレントを長期間受諾することで、実質の賃料が半額程度になっている物件まで出現しているというのが実態だ。

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2025年は不動産マーケットにとって大きな転機に

 振り返ってみれば人類の働き方の主流にあったのは、縄文時代は狩猟、弥生時代は農耕であり、産業革命で工場労働となり、現在のような事務を行う働き方が主流の地位を得たのは戦後からだ。いまではアマゾンやグーグルのようにモノを製造しないプラットフォーマーが一世を風靡し、人々の働き方は今後、多くの事務作業は生成AIが代行し、これを操るクリエイティブワーカーが主流となる時代だ。オフィスというハコに大量の事務ワーカーを雇って業務をこなすという働き方は早晩消え去る運命にある。

 このような環境変化の中で、さて不動産マーケットはどのように変化していくのだろうか。とりわけ金融環境の変化がはっきりすると考えられる2025年は不動産マーケットにとって大きな転機になる可能性を秘めている。宴はいつまでも続くものではない。そして宴を長く楽しもうとする者たちにとっては、宴の後の詫びしさが一層身に応えるというのも世の中の理なのである。