不動産マーケットへの影響は?
さてこうした前提のもとで今回の大混乱が不動産マーケットに及ぼす影響をシミュレーションしてみよう。株式市場は輸出関連株を中心に下落している。今年1月7日には4万円台にあった日経平均株価は、今後もアメリカと他の諸国との交渉如何で振り回される展開になることが予想される。
株価の下落、経済への悪影響、そしてドルに対する信認低下による円高基調により、段階的な利上げを目論んでいた日本銀行にとっては、しばらく様子見せざるを得なくなりそうだ。利上げが不動産マーケットに強い影響を及ぼすはずだとみていたシナリオに調整が入ることになる。早ければ5月にもとされていた利上げは各国との交渉状況がみえてくるまで凍結になるだろう。
アメリカ株価の下落は多くの富裕層の懐を痛めている。日本国内の富裕層も多くがアメリカ株式に投資を行っている。被害は甚大だ。特になけなしのお金を金融機関の勧めで、アメリカ株式に突っ込んだ人たちは生きた心地もしないだろう。くわえて日本株も下落。被害は急拡大している。
対外資産の運用で潤っている日本企業にも影響が…
彼らの懐が痛んでいるということは、日本の不動産に投資を行っていた国内外の投資家の行動に影響を及ぼす可能性がある。特にアメリカとの貿易などで稼ぎを膨らましてきた中国の富裕層にとっては、今後の中国国内の景気の悪化は、投資の手じまいを招く可能性が大きい。
円高傾向は、いったん投資をエグジット(売却)する動機につながる。日本の不動産に投資していた投資家が、いったん自国通貨に変換して売却。現金で持つ選択をする投資家も現れそうだ。
対外資産の運用で潤っている日本企業にも一定の影響が出てきそうだ。自動車産業でなくとも、アメリカへの輸出のない企業であっても対外運用資産で株価の下落や含み損を抱えるようになれば当然、企業の業績に悪影響を及ぼす。
こうした連鎖は、これまで気前よく賃上げをしてきた一部の大企業に微妙な空気をもたらすだろう。春の賃上げはすでに実施済みだが、今後ボーナスなどで調整したくなるところも出てきそうだ。
