飲食店勤務や配送業との「兼業レスラー」
こうした事態を受け、興行を自粛している7つのプロレス団体の選手代表が、自民党の馳浩衆議院議員に簡易検査キットの早期普及や選手の休業補償に対する要望書を提出した。自身もプロレスラーである馳議員は業界に理解を示し、協力を約束したが、一方でプロレス界をまとめる統一組織の必要性も指摘した。
「プロレス業界にはコミッショナー制度のようなものがなく、誰でも名乗れば『プロレスラー』になれます。それぞれが個人事業主になるため、雇用調整もなければ補償を受けることも難しい。なので、試合がなくなると真っ先に苦しくなるのが、インディペンデント団体などで試合する末端のレスラーたちなんです」(別のプロレス記者)
そもそも新日本プロレスや全日本プロレスなどの大手団体以外のインディペンデント団体は興行数が少なく、プロレス一本で食べていくのが難しいため、別に仕事を持っている「兼業レスラー」も多いという。
「試合のない日は、飲食店勤務や配送業などで生計を立てているレスラーも多いですね。最近ではフィットネスクラブなどでパーソナルトレーナーとして活動する選手も増えてます。ただ、そうした副業もコロナの影響で止まってしまうため、多くのレスラーが路頭に迷っているという状況でしょうね」(前出・プロレス記者)
末端レスラーはバイトの日々
大手団体に所属している選手や、様々な団体に呼ばれるような有名レスラーなら、興行中止の数カ月間を耐え忍ぶことができるかもしれないが、まったく未来が見えなくなっているのがこれからのマット界を担う有望株や新人レスラーたちだ。
「いまは試合がないので、プロレスラーとしての収入はゼロですね。知り合いのツテで、日雇いという形でアルバイトさせていただいたりしています」と話すのは、プロレスラーの島谷常寛さんだ。DDTに入門して2016年にデビュー、ダムネーションというユニットのマネージャーという立ち位置で人気を集めていた若手レスラーだ。
「DDTにはすごくお世話になってたんですけど、去年の11月に退団して、今年からフリーのプロレスラーとして頑張っていこうと思っていた矢先にこういう事態になってしまったんです……」(島谷さん)