みなさん、こんにちは! 埼玉西武ライオンズOBの米野智人です(ヤクルト→西武→日本ハム)。
昨年からライオンズの本拠地ベルーナドームのライトスタンド後方でピンクのお店「BACKYARD BUTCHERS」を営業させていただいています。いつもご来店くださっている皆さま、本当にありがとうございます。
現在、ライオンズは投打ともに絶好調で快進撃を続けている。僕もベルーナドームに向かう時の気持ちは晴れやかで、今日はどんな試合になるのかと楽しみにしている。
勢いのあるチームの攻撃陣の立役者の1人が、どすこいポーズでお馴染みの“アグー”こと山川穂高だ。2013年にドラフト2位でライオンズに指名され、「おかわり2世」と期待され入団。ライオンズは、中村剛也の後継者として見た目もそっくりな体型の山川を将来の4番にという思いだったのだろう。
2014年、山川の1年目。僕はシーズン最初の春季キャンプは2軍スタートで高知県の春野町にいた。軽い体調不良で同じく2軍キャンプスタートになった山川も、プロとしての第一歩を高知県春野町からスタートさせた。
初日から全体練習には参加せず、1人別メニュー。その時点でなかなかの大物感だ(笑)。
みんなが朝から様々なメニューをこなしている中、室内練習場の隅っこでひたすらティーバッティングを続けていた姿が印象的だった。その練習方法も独特で、ティーアップされたボールの下にバットの軌道を入れてフライを打つ感覚で、何球も何球も繰り返し打ち続けていた。
それを見ていた僕は、初対面のときに挨拶して以来、初めて山川に自分から話しかけた。
米野「山川、なんでフライ打つ練習ばかりしてるの?」
山川「あ、これっすか? ホームランを打つ練習です」
米野「なるほど。ゴロを打たないように角度をつけるってことね」
山川「そうっすね! 僕は足も速くないし、プロでもホームランを打てないと終わりだと思ってるので」
米野「まあ確かにそうだね(笑)」
山川「ライオンズもそれに期待して僕を指名してくれたと思うので」
そんな会話から、“プロでホームランバッターになるんだ”という山川の強い信念を感じた。
僕の記憶では、これが山川との初めての会話だった。本人は覚えていないと思うが、もしかしたら本当に「おかわり2世」になるかもしれない! そんな予感がしたことを覚えている。
中村剛也にバッティングのことを聞いたときにも、練習からゴロを打たないように意識していると言っていた。「練習でゴロが多いときは調子が悪いときですね」と。これが自分の中でのバロメーターになっているのだろう。
とはいえ、プロの投手を相手に試合で角度をつけてボールを遠くに飛ばすのは、かなり高度な技術が必要だ。中村も高卒で入ってきて1軍でホームランを量産するまでになるには、それなりの年月がかかっている。中村は高卒4年目に22本を放ち、7年目に初の40本塁打以上となる46本を記録した。
規格外の場外弾VS愛車を守る選手たち
初めて臨んだプロのキャンプで体調を回復させ、全体練習に参加した山川の打撃練習を初めて見たときは衝撃だった。
打球の飛距離と速さが半端ではなかった!
西武第二球場(現CAR3219フィールド)にはレフトに高いネットが設置されているが、それを軽々と超えてしまうほどだった。センターバックスクリーンの後方にあった室内練習場の屋根にも、何発も当てるくらい規格外の飛距離とパワーだ。
当時の室内練習場と選手寮付近のスペースに、ベテラン選手(現在の西口文也二軍監督など)が車を駐車していた。山川がバッティング練習を始めると、みんな、グローブをはめて自分の愛車を守っていたほどだった(笑)。
山川には、持って生まれたフィジカルの強さを感じた。高卒で同期入団の森友哉にも体の強さを感じたが、山川はそれをさらに規格外にした感じだ。今季、打点王争いをしている元ライオンズの浅村栄斗(楽天)にも感じたような、スイングの強さだ。
見ている方も気持ちがいいくらいのフルスイングは、周りが思っている以上に難しい。ピッチャーに対してタイミングをとるのがうまくないと、フルスイングはできない。そうしたスイングをしていた3人とも、球界を代表する選手に成長している。