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苦しいときこそ、ブレずにじっと我慢する

――山田哲人、村上宗隆両選手が苦しんでいます。この2人をどう見ていますか?

坂口 WBC出場というイレギュラーなスタートの中で、故障者が続出して彼らに負担がいっているのは確かだと思います。でも、村上選手については、確かに不調ではあるけれど、ホームランも打点も、それなりにリーグ上位の成績を残しています。山田選手も、ここ数年「本調子ではない」と言われていても、それでもコンスタントに20本以上のホームランを打っています。やっぱり、彼らの存在は他球団にとっても脅威であることは間違いない。彼らが復活するのを待つしかないのが現状でしょうね。

――開幕以来、「四番・村上」という起用が続き、評論家やファンの中では「四番にこだわらなくてもいいのでは?」という声もあります。「大幅に打線を組み替えてみては?」という意見もあります。坂口さんはどのように考えますか?

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坂口 髙津監督がどのような信念や考えを持っているのかは僕にはわかりません。でも、これは僕の持論ですけど、調子の悪いときに何かを大きく変えると、結果的に悪い方にズルズルといってしまう気がします。チーム状態が悪いときに軸をグラグラさせてしまうと、もっとガタガタになる。チーム作りというのはその場しのぎじゃない方がいい。僕はそう考えますね。

――もしも坂口さんが今も現役でベンチにいたら、山田、村上両選手にはどのような言葉をかけますか?

坂口 いや、特に何も言葉はかけられないけど、強いて言うとすれば「我慢しかないよね」ということですかね。打てないことも、勝てないこともあるし、誰一人として負けようと思ったり、「打たんとこ」と考える選手なんていないですから、周囲からもいろいろなことを言われているかもしれないけど、「今は我慢するしかないよね」と言いますね。

古巣・オリックス、そして近鉄に対する感謝

――6月16~18日までは、坂口さんの古巣である対オリックス・バファローズ戦が行われました。どんな立場、どんな心境で見守っていたのですか?

坂口 中立です(笑)。ちょうど、真ん中から見ていました。一緒にプレーしていたT-岡田、安達了一、西野真弘、若月健矢もいるし、ピッチャーでは平野佳寿さん、比嘉幹貴さんもいますから、オリックスにも愛着はありますね。T-岡田については、「何しとんねん、はよ一軍に上がってこいよ」と思っています(笑)。オリックスはヤクルトに3連勝しましたけど、2年連続でリーグ制覇し、昨年は日本一にもなっているし、圧倒的な投手力だけでなく、今年は打線も好調で、とても強いチームですね。

――2015年オフ、坂口さんがヤクルト入りする際、必ずしもオリックスから「円満退社」というわけではなかったですが……。

坂口 確かにそうですね(苦笑)。でも、いろいろあったにせよ、最終的には僕から自由契約を望んでヤクルト入りしたわけだし、もう10年近くも経っているので感謝の思いはあっても、それ以外の感情は何もないですね。それは近鉄に関しても同じ思いです。

――昨シーズン限りで坂口さん、そして近藤一樹さんが引退したことで、現役の近鉄在籍選手はいなくなりました。

坂口 僕らが現役でいたときに「最後の近鉄戦士」と言われるのは嬉しかったし、すでになくなってしまったチームの名前が表に出てくるという点ではよかったと思います。当時の僕はまだ若手で何も成績を残していなかったので、「近鉄を背負う」とは言えないけど、今でもこうして「近鉄」という名前を出してもらえることで、「少しは恩返しができたのかな」という気持ちはありますね。

「何で負けるんだ、なんでやねん!」と思っても「頑張れ、勝ってくれ!!」というのがファンだと思う

――さて、話を再びヤクルトに戻しますが、まさに我慢の時期が続くヤクルトファンに向けて、OBとして何か言葉をかけるとしたら、どんな言葉をかけますか?

坂口 僕から言えることは「勝つことを信じて《応燕》してください」としか言えないですね。昨年、ユニフォームを脱いで、僕も一ファンとなってわかったんですけど、選手たちは仕事として全力でプレーする。そしてファンは「頑張れ、勝ってくれ」って精一杯、応援する。そんな関係だと思うんです。ときには「何で負けるんだ、なんでやねん!」と思うこともあるかもしれないけど、それでも「頑張れ、勝ってくれ!!」というのがファンだと思うので、そういう目で選手たちを見てほしいなと思います。まだまだ巻き返しはできる時期。みんなで力強く「応燕」しましょう!

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