長崎半島の沖合に浮かぶ端島。狭い土地を有効活用するために、島はコンクリートの護岸で囲まれ、高層アパートが林立するその姿から軍艦島と呼ばれた。
敗戦国ニッポンの経済成長を支えたのは石炭だった。石炭産業のピーク時、島の人口密度は東京を超えた。そんな島で育った荒木鉄平(神木隆之介)と、幼なじみの朝子(杉咲花)、百合子(土屋太鳳)、賢将(清水尋也)らを中心に据えたドラマが『海に眠るダイヤモンド』だ。
島の様子や、まだ若い男女の姿や心を描いた後、画面は一転して二〇一八年の現代に。いまひとつパッとしないホストの玲央(神木隆之介)が、正体不明の謎の女性いづみ(宮本信子)と出会う。玲央の祖母くらいの年齢差がある。
神木君は二役。どうやらいづみは会社経営者で、端島とも縁浅からぬようだ。
石炭の島、端島の一九五〇年代と、二〇一八年の東京。ドラマは両者を往還し、さながら《二都物語》のように展開する。
端島は鷹羽鉱業の島だ。土地はすべて鷹羽の所有地だし、海底深く坑道で石炭を掘る炭鉱員は、すべて鷹羽の従業員で、職員、鉱員(その下に非正規鉱員)、そして食堂や商店という階級が厳然と存在する。
銀座食堂の看板娘、朝子に何かと意地悪する職員の娘、百合子。そこへ本土から謎の女、草笛リナ(池田エライザ)が流れ着いて、若い女が三人。鉄平も賢将も青春真っ盛りだし、何かといえば人心攪乱して喜ぶ百合子のせいもあって、恋愛事情は華やかに。当時を述懐していづみさんは、三角関係どころじゃなくって何角関係かねホホホ。
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source : 週刊文春 2024年12月12日号