NHK時代の岩田明子という人を実はあまり覚えていない。とにかく安倍首相(当時)にベッタリの政治記者というイメージ先行で、画面に出たらチャンネル回してたので。

 そしてこの人がNHKをやめてフリーになり、『めざまし8』にコメンテーターとして出てきた時に、政治ネタを振られると、「安倍元首相はこんな時は」「安倍さんは当時」「安倍さんなら」「安倍さんでも」って、なんか安倍さんにからめたコメントばかりしていたから「ああ、この人にとって安倍さんがすべてだったんだな。でも安倍さんはもういない、どうするんだろう」。

 と思っていたら、なんか最近、雰囲気が変わってきた、岩田さん。

岩田明子さん ©文藝春秋

 今は安倍さんの話題を無理やり盛り込んだりしない。さすがにネタも尽きたか、あるいはいつまで引っ張ってんだと自制しているのか、ふつうに政局について安倍さん抜きでコメントしている。

 それを見ていてわかったが、岩田さんは「これは実は」系のことはほとんど言わない。ワイドショーの政治経済系コメンテーターは、田﨑史郎みたいな「実は○○幹事長に聞いたんですがね」と、まことしやかにネタを披露するタイプがでかい顔をする。岩田さんはこのタイプではない。安倍さんがいた時にはこれをやってたんだろうけど、安倍さん亡き後は別の政治家にこれをやってる気配は感じられない。

 政治経済系コメンテーターの、田﨑史郎タイプに対するのは古市憲寿みたいな、取材不要の「常識に茶々をいれる」「庶民感覚を上から見て嗤う」系だが、岩田さんはこれでもない。

 わりとふつうの、穏当な、ハッとしない政治話を、塩辛声で語る。NHKの解説委員までやってた東大卒の人って感じは、話す内容にも外見にもそれほどない。しかし別に反感も湧かず、親戚の家に行った時に伯母さんがテレビ見ながら感想言ってるような雰囲気。あー伯母さん詳しいのね、ところで今晩のおかずはなに?みたいな。

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source : 週刊文春 2024年12月19日号