(いいまひろあき 国語辞典編纂者。1967年、香川県生まれ。『三省堂国語辞典』編集委員。辞書を作るため活字や放送、インターネット、街の中など、あらゆる所から現代語の用例を採集し、説明を書く日々を送る。著書に『辞書を編む』(光文社新書)、『日本語はこわくない』(PHP研究所)など。)

 

 生家は今も香川県高松市にありますが、昭和6年(1931)に祖父が建てた2階建てのなかなかの豪邸でした。1階には台所兼食堂のほかに6部屋、2階には8畳の部屋が2つ。そしてこの家をぐるっと囲むように4つの庭がありました。正門から玄関へ続く前庭、灯籠やつくばいが置かれた北庭、石のテラスと大きな池がある南庭、樹木が生い茂り、石のテーブルと椅子、ブランコ、砂場がある東庭です。特に東庭は広く、後に親戚の家が2軒建ったほど。幼い頃は、庭で近所の子たちとよくかくれんぼをしていました。隠れる場所には不自由しません。ただ、なぜか途中で気分が冷めてしまって、そっと自分の部屋に戻ったこともありました。1人でいると落ち着くんです。生家にいた頃の記憶と言えば、1人で本を読んだり、絵を描いたりしていた光景がまず浮かんできますね。

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source : 週刊文春 2025年1月23日号