再選直後「立花さんに共感する」と語っていた斎藤。その立花が襲われた。前県議の竹内は週刊文春に〈あまりにも怖い〉と訴えるLINEを送り、1月、命を絶った。彼の妻は苦しい胸中を明かし……。負の連鎖を招く知事を直撃した。

 

■《連続報道》兵庫県知事・斎藤元彦

#33 斎藤元彦「冷血の知事」 メルチュ折田楓社長を発見撮!

#34 斎藤元彦の最暗部「4億円パレード補助金」
#35 元県民局長の自死を招いた 斎藤元彦「暴挙の8日間」

#36 斎藤元彦と立花孝志“魔の合体”の裏に2人の女がいた!

#37 今回はこちら

「知事の責任は県民の命に対してはもちろん、県土の一木一草にまで及ぶ」

 阪神・淡路大震災が起きた1995年に兵庫県知事だった貝原俊民が在任中の信条としてきた言葉だ。

 貝原は県庁から約3キロ離れた職員住宅を公舎としていた。95年1月17日午前5時46分、公舎で被災したが、被害状況を把握し、渋滞を通過して登庁したのは発災から約2時間半が過ぎたころだった。初動の遅れが被害拡大に繋がったという後悔はいつまでも付き纏い、2001年に辞意を表明した際の県議会の演壇でも「一木一草」のフレーズは使われた。

 貝原は、読売新聞のインタビュー(02年)で、知事選への初出馬を決めた時期をこう振り返っている。

「知事としての心構えについては迷いがありました。そんな時、金井元彦・元兵庫県知事の言葉に出会いました。知事になられた時、これからは県土の一木一草も自分に関係あるのだという強い責任感を持ったというのです」

 1962〜70年に知事を務めた金井の名は、77年に神戸市で生を受けたある男児へと引き継がれた。「元彦」の名付け親となった祖父は、この孫を一族の中で人一倍溺愛した。やがて彼は、祖父の期待を体現するように将来を志すようになる。

「兵庫県知事になりたい」

 時が過ぎ、宣言通りに知事の座に就いた気鋭の政治家もまた、22年2月の県議会の初日に次のように語った。

「知事の責任は県土の一木一草にまで及ぶ」

 そして今、およそ半世紀にわたって脈々と語り継がれてきたこの言葉が、兵庫県知事・斎藤元彦(47)に突きつけられている。

「県民の命」をどう考えているのか

 斎藤はあまり自らの言葉を持っていない。

 記者会見では想定問答を用意し、百条委員会の証人尋問には弁護士を同席させてきた。昨年3月27日の会見で〈齋藤元彦兵庫県知事の違法行為等について〉と題する告発文書を作成した元西播磨県民局長、中村良介(仮名)に対し、つい“台本”を逸脱して発言したことが影響を与えているのだろう。「業務時間中に『嘘八百』を含めて、事実無根の文書を作って流す行為は公務員として失格です」。この一言が問題になって以降、法的リスクを冒さないことだけを最優先に考えてきたように映る。

知事の疑惑が記された告発文書

 遡れば、21年7月に初めて知事選に出馬し、立候補の理由を問われた際にも「知事になりたいから」の一点張りで、知事になって何を為したいかと聞かれても答えられなかった。

 昨年11月の出直し知事選でも、演説中に出てきたのは実績のアピールと、「私はマスコミからも県議会からも県職員からも辞めろと言われた」、そして「でも私は負けない」という言葉。聴衆の盛り上がりとは裏腹に、政策論は「県政を前に進めたい」とするばかりで具体性に欠けた。

 斎藤の言葉をそのまま読み解けば、マスコミ、県議会、県職員に対する「対決宣言」であることは容易に想像がつく。県民の分断を煽るような発言で、為政者としては大きな危うさを孕む。しかも、そこに「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志(57)の“応援”が加わり、実際に彼らの演説を聞いた聴衆はマスコミ、県議会、県職員への嫌悪感をむき出しにしていく。

 こうした発言をとりわけ憂えていた人物がいた。

〈知事がマスコミに負けるわけにはいかないって…。表で言うんですね。立花と同じ考えなんですね。どんどんおかしくなります〉

 知事選の最中、「週刊文春」記者にそうLINEを送ってきたのは、兵庫県議の竹内英明(享年50)だった。

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source : 週刊文春 2025年3月27日号