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『DTOPIA』(安堂ホセ 河出書房新社 1600円+税)を読んだ。黒人差別、原爆、複数のルーツを持つ子ども、イスラエルによるガザ侵攻など、多岐に渡るテーマが目まぐるしく飛び交う。
物語は恋愛リアリティーショー「DTOPIA」から始まる。舞台は2024年、南太平洋ポリネシアの楽園、ボラ・ボラ島。白人女性“ミスユニバース”を巡って、10人の男たちが繰り広げる群像劇が描かれる。
「DTOPIA」は全10回。エピソードが進むにつれ、ミスユニバースの“浮気”が発覚する。相手は10人の男たちではなく、現地人の召使い。「ここには黒人が一人もいない」「人選が偏りすぎてる」からだと彼女は言い訳するが、男たちも視聴者も、そんなことには気づいていた。「いなくていい」という自分たちの本心にも。たとえば、2024年のアカデミー賞で候補になった、『バービー』『オッペンハイマー』『哀れなるものたち』『アメリカン・フィクション』『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』。白人ルッキズム、原爆、男女差別、黒人差別、ネイティブアメリカンの虐殺を描くこれらの映画を、「二十世紀に白人が残した負の遺産をセルフ懺悔するコンセプト」だったと一蹴する。「誰の責任か追及できないぐらい昔の(略)過ちを、白人俳優たちが『私たちは自分の愚かさをちゃんと分かってます』って顔で演じてみせる映画」をハリウッドが量産したのは、「白人たちの懺悔ショーであれば今まで通り白人ばかりが中心にいても問題視されない」からだと語る。作る側と観る側の、白人だけのロマンスを蘇らせたいという欲望を叶える光なのだと。
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source : 週刊文春 2025年5月29日号