「長嶋さんがいなければ、僕は野球をやっていたかわかりません」

 

 そう偲ぶのはミスタータイガースこと掛布雅之さん。長嶋茂雄さんは同郷の先輩でもある。

「僕が野球を始めた小学4年から高校3年までの9年間は、巨人のV9時代と重なるんです。打つ姿、守る姿、走る姿全てがカッコよくて憧れの存在でした」

「ヘルメットの飛ばし方まで研究した」と語った豪快なフルスイングで、三振さえもエンターテイメントにし観客を魅了。打撃に加え「歌舞伎の所作を参考にした」という華麗な守備や、内野ゴロでもアグレッシブな走塁など、全てのプレーで“魅せる”野球を貫いた ©︎文藝春秋

 そのバッティングにも、掛布さんは感銘を受けてきた。

「今、テイクバックであれだけ大きくヒッチするバッターはいないと思うんです。最初は長く持つんですけど、テイクバックしてトップに行く時に2、3センチ短く持ち直すんですよ。それでインコースのボールに対応するんです。『平松政次さんの“カミソリシュート”に対応するための“つばめ返し”だ』なんて当時コメントされてましたが、そういう対応も言葉も面白くて、全てに憧れました」

©︎文藝春秋

 “ミスタープロ野球”は空振りしても様になった。

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source : 週刊文春 2025年6月19日号