久々に「テレビを見て何かを学んだ」という気持ちになった。『パンチパーマ史~時代を巻く者たち~』。

 いきなり具志堅用高が出てきて理容室のイスに座り、「最近は減ってきたなー! パンチパーマ!」とかいう導入を見たら「NHKが深夜帯によくやるふざけたサブカル番組か」と言いたくなるが、実はパンチパーマの歴史がひもとかれるたいへん真面目な内容なのだった。

具志堅用高 ©文藝春秋

 そもそもパンチパーマの発祥がどこで、どういう理由かなんて考えたこともなかった。物心ついた頃には「カタギじゃないおっさん世界の独自な美学」みたいなものになってたから、パンチパーマ発祥の地として「北九州」と出てきた時には「やっぱりな。ヤンキー成人式や工藤會の土地柄だしそういう土壌からパンチも生まれる」と思ったらそんな単純な話じゃなかった。

 チョンマゲを切り落としてからこっち、男性の髪型は「短髪!」と決まっていたのだが、ビートルズによって長髪ブームが到来。それによって「男性が理容室に来る頻度が減る→理容室ピンチ」からの、「北九州の伝説の理容師が理容器具ディーラーと組んで開発した」のがパンチパーマの始まりだというではないか。

 パンチが生まれたのはビートルズのせいなのかよ!

 理容室の壁には「長髪追放! 男は男らしく」とか、今どきなら炎上するようなポスターが貼ってあるし。でもそれは「理容業界」にとっては死活問題だったのだな。

 北九州から生まれたパンチパーマは、そのカッコ良さから全国に広まり、タレントやスポーツ選手もこぞってパンチへ。そのスポーツ選手の例でカープの山本浩二、高橋慶彦、江夏豊の写真が出たのは笑った。当時のプロ野球選手、ほとんどパンチだったような記憶があるがその中でもこの3人のパンチっぷりは「さすが仁義なき広島」を思わせるものがあったし、暴力団と関わりはないとしても、北九州や広島はパンチに親和性はあるだろう。

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source : 週刊文春 2025年6月19日号