もはや社会現象とまでなっている映画「国宝」。

 やっと行ってまいりました。

 こういうことを言うと自慢になるが、私はこの映画を誰よりも早く観る権利と義務があると思っていた。

 なぜなら吉田修一さんの原作が候補作にあがってきた時、あまりの面白さにほとんど陶然となり、これ以外にはないと中央公論文芸賞に強く推したからだ。また私は昔からずっと、歌舞伎を見続けてきた作家でもある。であるからして、この「国宝」が映画になると聞いた時、驚き喜び、試写会から行かねばと思っていた。しかし日々の忙しさについ追われてしまっているうちに、映画は大ヒットとなっていく。今では友人が集まると、

「観た?」

 と聞くことが多い。グループLINEでもこの映画について議論されることが増えた。

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source : 週刊文春 2025年7月17日号